ホワイトアウト寸前の吹雪の中。
ようやく辿り着いた藁葺の古民家の引き戸を薄く開ければ、袂に包まれてヌクヌクとしていた黒猫が「お前はもう用済みだ」とばかりに私の腕の中から抜け出して、軽快な足取りで戸の内へと入っていった。
薄情なヤツだな、ため息一つ吐いて再び引き戸に手を伸ばせば、ガララッと音を立てて引き戸が全開になる。
「こんな日に当たるなんて、災難だったな」
ホラ早く入れ、と綿入れを羽織った君がニカッと笑った。
最近では、ヒートショックという危険なモノが流行っているそうで。
「足先とか手とか、末端から掛け湯するんだぞー」
と、浴室と脱衣所を隔てる薄い摺り硝子越しに声をかけられた。
「はいはい、わかりましたよ」
そう言って、手桶になみなみ入った湯をザバッと豪快に肩にかけると、君の忠告を無視して湯船に飛び込んだ。
テーマ「冬は一緒に」
12/18/2024, 5:36:52 PM