今日は脳を使い過ぎたようだ。
とくに意味のない文字の羅列に縦横斜めの無数の線が、閉じた瞼の裏、グルグルグルグル回転しつつ明滅を繰り返している。
カレイドスコープみたいだ。
キラキラ、クルクル、ヒラヒラと、色とりどりの華やかな輝きが躍る。
ユラユラとした浮遊感に浸りながら、深く息をついた。
本当に、本当に綺麗なんだけれど……。
ねむれない!
テーマ「子供のままで」
そもそも愛なんてあるのかな?
適当に男や女を宛行って増えた、その子孫に。
機械的に繁殖行為を繰り返して生まれてきた個体じゃないか。
愛なんかない。
アナタはパパとママが愛し合って生まれてきました〜☆彡
違う違う、愛なんかじゃない、税金が安くなるから作っただけだろ?
子は鎹って言うじゃないか、みんなモノとして生み出されるんだよ。
どこにも存在しない愛なんてモノに踊らされて、骨の髄まで搾り取られて、用済みとなったらポイッ。
今や墓すら無くそうとしてる。
愛はあると、言う奴に聞いてみたいな。
盲信しているソレは、本当に「愛」なのか?って。
テーマ「愛を叫ぶ」
白いヒラヒラした奴。
葉っぱに止まっている時が狙い目だ。
気づかれないように、近くまで忍び寄って。
スキをついて飛びかかる!!
得意の右フックを華麗に躱した白い奴は、小馬鹿にしたように俺の周りをヒラヒラし出す。
くそっ、おちょくりやがって!
飛んで跳ねて転げまわって、疲れ果てて戦意喪失した俺の眼前を勝ち誇るようにヒラヒラしてから、奴は何処かへと飛んでいってしまった。
……今日はこの辺でカンベンしといてやるっ。
テーマ「モンシロチョウ」
5歳の夏休み、家族と標高1200m程の山に登った。
今では考えられない、半袖のTシャツに短パン、サンダルという、とんでもない軽装で。
山に登るなんて、登る直前まで聞かされていなかったと思う。
朝っぱらから唐揚げ揚げてる〜、とは思っていた。
申し訳程度に整備され、薄っすら階段状になっている山道を駆け上がっては、岩の上で休んだことを覚えている。
体力の限界を迎えて草臥れていた私に「あと少しだよ〜」と声を掛けてきた爺さんのことは今でも忘れることはない。
青いギンガムチェックっぽいシャツにジーンズ、両手に杖を持っていた、白髪の爺。
ベストも着ていた気がする。
爺の言葉を信じて、登り続けた。
が、全然「あと少し」という距離ではなかった。
私は、既に故人であろうあの爺のことを、今でも恨んでいる。
テーマ「忘れられない、いつまでも。」
36252日と8時間12分前。
白くてフニャフニャしたアナタの手に触れた時、私のボディの何処かに衝撃が走りました。
直後に目の前の御主人様に報告し、点検をしてもらいました。
が、特に異常は見当たらず「今日は乾燥してるからかも」という御主人様の言葉に「そういうものなのだ」と、自分を納得させることにしたのです。
嗚呼、御主人様、これが初恋なんですね。
寝台の上に投げ出されたシワだらけのアナタの手に触れる。
途端に走った衝撃に私は、どうしたら良いのか分からなくなった。
アナタはもう居ない、アナタの為のこの私も、もうすぐ廃棄されるだろう。
その際には私の内部記録の一切を消去される筈だ。
アナタとの思い出も、アナタへの思いも、御主人様のことも、全て消えてしまう。
それは嫌だ、これは私のもの、私の宝物。
残すことが出来ないのなら。
アナタと共に。
――ただのAIロボットでしかない私ですが、どうかアナタと同じ所へ逝けますように――。
テーマ「初恋の日」