しじま

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5歳の夏休み、家族と標高1200m程の山に登った。

今では考えられない、半袖のTシャツに短パン、サンダルという、とんでもない軽装で。

山に登るなんて、登る直前まで聞かされていなかったと思う。

朝っぱらから唐揚げ揚げてる〜、とは思っていた。

申し訳程度に整備され、薄っすら階段状になっている山道を駆け上がっては、岩の上で休んだことを覚えている。

体力の限界を迎えて草臥れていた私に「あと少しだよ〜」と声を掛けてきた爺さんのことは今でも忘れることはない。

青いギンガムチェックっぽいシャツにジーンズ、両手に杖を持っていた、白髪の爺。

ベストも着ていた気がする。

爺の言葉を信じて、登り続けた。

が、全然「あと少し」という距離ではなかった。

私は、既に故人であろうあの爺のことを、今でも恨んでいる。

テーマ「忘れられない、いつまでも。」

5/10/2024, 5:34:59 AM