36252日と8時間12分前。
白くてフニャフニャしたアナタの手に触れた時、私のボディの何処かに衝撃が走りました。
直後に目の前の御主人様に報告し、点検をしてもらいました。
が、特に異常は見当たらず「今日は乾燥してるからかも」という御主人様の言葉に「そういうものなのだ」と、自分を納得させることにしたのです。
嗚呼、御主人様、これが初恋なんですね。
寝台の上に投げ出されたシワだらけのアナタの手に触れる。
途端に走った衝撃に私は、どうしたら良いのか分からなくなった。
アナタはもう居ない、アナタの為のこの私も、もうすぐ廃棄されるだろう。
その際には私の内部記録の一切を消去される筈だ。
アナタとの思い出も、アナタへの思いも、御主人様のことも、全て消えてしまう。
それは嫌だ、これは私のもの、私の宝物。
残すことが出来ないのなら。
アナタと共に。
――ただのAIロボットでしかない私ですが、どうかアナタと同じ所へ逝けますように――。
テーマ「初恋の日」
5/7/2024, 4:57:07 PM