また一人、此処を去ろうとする者がいた。

まだ子供で、ちょっとした好奇心だったのだろう。

高い壁をよじ登って、暫く外の景色を眺めている。

どうするだろうか、去るか、戻るか。

私は、どちらでも構わない。

また造れば良いと、長椅子に寝そべり深く息を吐く。

やをらと目を壁へ向ければ、既に子供の姿は壁上には無かった。

テーマ「楽園」

魔法使いみたいに箒に乗って。

竜騎士のように飛竜に跨って。

真っ白な綿雲のクジラの背に寝転んで。

飛んでみたいな、果てしない空を。

酔い止めの薬を飲んでから。

テーマ「風に乗って」

小指と薬指を軽く曲げて、親指を中指の腹の少し左側に押し付ける。

人差し指はピーンと真っ直ぐ立てて。

親指と中指に力を込めて、込めて。

親指の付け根に当たるように弾くっ。

　うん、良い音。

これで60〜65刹那、だってさ。

テーマ「刹那」

空っぽの箱に大切なものを詰めていく。

子供の頃からずっと一緒にいたクマのぬいぐるみ、誕生日プレゼントに貰ったカードやオモチャ。

数少ない家族写真、お気に入りだった髪留めやタイ。

空っぽだった箱の底が少しずつ見えなくなって、でも、まだまだ一杯には程遠い、私の箱。

人一人がすっぽり収まりそうな大きな箱、とても抱えきれないその箱に、後は何を詰めればよいのか。

私は途方に暮れた。

テーマ「生きる意味」

棚のものを落としちゃうのも、テーブルの上に乗っかっちゃうのも、いけないことだと分かっているよ。

だけど、こうでもしないと君は構ってくれないじゃないか。

今日、僕の名前を何回呼んだ？

僕のこと撫でた？

遊んでくれた？

ごはん、おやつ、トイレのお掃除、してくれたのは君じゃあない。


僕は毛が生えたインテリアじゃない、ちゃんと構ってくれよ。

君とは違って、僕には爪も牙も生えているんだよ。

テーマ「善悪」