しじま

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4/15/2024, 3:55:01 PM

 どうせ言っても伝わらない、身近な人間にすら分かってもらえない。

結局は自分だけが傷付いて、ただ疲れるだけ。

 なら、口を閉ざして適当に時間を潰す方が得じゃないか。

さもしい人間ばかりが跋扈する、こんな世界で。

誰とも繋がらず、誰かに愛されることも、誰かを愛することもなく。

 暗く凍てついた深海を揺蕩う白い海月のように。

テーマ「届かぬ想い」

4/15/2024, 5:26:39 AM

 あの人は、何が好みだろうか?

物語を円滑に進めるための都合の良い現象。

 「一目惚れ」なんて、恋に恋する女子の思い描いたフィクションだと思っていたのに。

いつもどんなものを食べてる?

香水はどこのブランド?

お気に入りのお店は?

お休みの日は何してる?

猫と犬、どっちが好き?

 なのに最近は暇さえあれば、あの人のことばかり考えてしまう。

夢見る乙女の空想ならばご都合主義の連続で、あれよあれよと言う間に好き合う仲と成れるのだけれど。

 現実はそんなに甘くはない。

甘酸っぱい溜息一つ、午後も仕事だと行きつけの食堂を出て直ぐの角で。

出会い頭、よく知るスーツ姿のあの人とぶつかった。

テーマ「神様へ」

4/12/2024, 4:53:17 PM

 降りしきる雨の中、小さな子供が全身ずぶ濡れになりながら、白茶けた地面を素手で掻いていた。

楽しげに声を上げるでもなく、その年頃の子供には似つかわしくない無表情で、ただひたすらに。

 辺りを見回しても、親らしき人物は愚か人工建造物さえ見当たらない、辺鄙な山奥に子供が一人。

小さなその手では大して掘れないだろうに、擦り切れて血が滲み出した指先で、それでも子供は地面を掻き続けていた。

 なくしものかい。

子供の隣にしゃがみ込んで尋ねた、聞きたいのはそんなことじゃないのに、私の口から出たのは全く気が利かない、野暮な言葉だけだった。

子供はこちらには目もくれずに手を動かし続けて、黙ったまま一度だけ大きく頷いた。

 ぼくのおうち、みんな、もうないの。

『何処でも良かったんです、一人で生きられるなら、ね』

無感情な子供の声と、初めて会った時に君が発した言葉が何故だかダブって聞こえた。

テーマ「遠くの空へ」

4/11/2024, 3:37:58 PM

これからって時だったのに、早すぎるよ……

子供も産まれて、G1も勝って、ホントだったら

あの日、あの満開の桜の下で

砂の上じゃなくて、舞い散る桜の中を

駆け抜けていた、筈なのに。

テーマ「言葉にできない」

4/9/2024, 4:28:20 PM

 人間ならば誰もが一度は「不老不死」を願うだろう。

特に他者よりも秀でた才がある訳でも、腐るほど金を持っている富裕層でもないのに、何故か望んでしまう。

 死を忌避する、生物特有の本能だろうか。

それとも、飛躍的に進歩していく科学技術に心躍らせていたいからだろうか。

 確かに死ぬのは怖いし、生前は謎とされてきた現象や不可能とされていた技術が、自分の死後に解明されたり実用化したら、と思うと。

……うん、死にたくないかな。

テーマ「誰よりも、ずっと」

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