世界は狭い。
自分の通う高校に、はとこが教師として赴任してきたり。
子供の頃に一度だけ会った見知らぬ子が専門学校の同級生になって、おまけに遠い親戚だったり。
遠い国で店番をしていた女性が十年後に義姉になったりした。
世界は狭いし、言葉は呪いだ。
軽々しく再会を望むような言葉なんかを吐かないほうが良い。
テーマ「この世界は」
朝、何時もの時間に君を見送って朝食の後片付けをしようとキッチンの流しに向かい、ふとした拍子に顔を上げた時だった。
真っ黒いスマホケースが目の前のカウンターに、ちょこんと乗っかっている。君のだ。
わすれものっ。
一瞬フリーズして、それからアワアワと泡まみれの両手を洗って手早く水分を拭き取ると、君のスマホケースを鷲掴みにして玄関までの短い廊下を駆けた。
テーマ「どうして」
久しぶりに君の夢を見たよ。
お気に入りのティーカップに緑茶を注いで飲んでいた。
まるで紅茶を飲んでいるかのように優雅に、でも飲んでいるのは緑茶で、それが何だか面白くて可笑しくて。
クスクス笑っていたら、君がキョトンとした顔をする。
懐かしい、胸が熱くなるようなこの気持ち。
幸せ、君と居るだけで。
君さえ居てくれれば、他には何も要らないのに。
目が覚めなければ良いのにと、朝日に霧散した君の笑顔を思い出しながら目元を拭った。
テーマ「夢を見てたい」
膝の上に乗っている君の頭をナデナデ。
丸まったお尻もサスサス。
プニプニの肉球をモミモミ。
はあ、癒やされる〜。
大きく上下した腹に顔を埋めて、顔面に当る毛を楽しむ。
ワシャワシャだあ〜。
刹那、君の強烈な蹴りが、こめかみに直撃。
テーマ「ずっとこのまま」
今朝は特に寒く、室内だというのに吐く息が白く染まった。
寒い寒い。
氷上のようなフローリングを爪先立ちで歩いて、君が居るであろうキッチンへと向かう。
ヤカンに水を入れていた君の背中に貼りつき暖を取る。
シバリングが治まるまで、「おはよう」はお預けで。
お願いします。
テーマ「寒さが身に染みて」