元日の朝七時、君の叫び声に叩き起こされた。
新年早々何事かと大きな欠伸をしながら布団から這い出て、未だ君の叫ぶ声が聞こえるリビングへ向かう。
リビングのソファには、パジャマ姿の君が突っ伏していた。
ソファからはみ出た足先を魚みたいにビチビチさせながら、ブツブツと何か呟いている。
……寝過ごしたか。
ドンマイ、と君の肩をひと叩きしてローテーブルの下のラグの上に転がっていたスマホに手を伸ばした時。
視界の端に光を感じて、そちらに目を向ける。
開け放たれたカーテンの先、雲一つない澄んだ広い空が橙色に輝いていた。
おお、初日の出〜、と両腕を伸ばしながら窓辺に寄っていき、ほんのりと暖かい朝陽を浴びて。
ほら初日の出。
スマホに反射させた朝陽を、ソファに突っ伏したままの君に照射した。
テーマ「日の出」
筋トレしてマッチョになる。
早寝早起き。
暴飲暴食しない。
部屋を片付ける。
お仕事頑張る。
記念日を忘れずに祝う。
君と旅行に行く。
たくさん思い出を作る。
チラシの裏にボールペンで箇条書き。
全部達成出来たら良いな、特に筋トレ。
マッチョな私を見て驚く君を想像し、クスクスと笑う。
あとは何かあるかなぁ、と少し考えてからペンを走らせた。
死なない、生きる。
君の泣き顔は、好きじゃないから。
テーマ「今年の抱負」
初日の出を見るんだ、と早々と寝てしまった君を起こさないように、キッチンでおせちの準備。
君の大好きな翡翠色の餡がたっぷりの栗きんとん、蒸したサツマイモを裏漉しするのが重労働だった。
甘さ控えめの黒豆、湯通ししてから甘酢に漬けた柚子皮入りの紅白なます、ケシの実がたっぷりとついた松風焼きにカリカリ食感のしょっぱいチョロギ、既にいくつかつまみ食いの跡がある。
悪い子だなあ、とクスクス笑いながら人参に包丁を入れた。
どんこ、花こんにゃく、クワイ、たけのこ、花の形に飾り切りをした人参を甘めの汁でクツクツと煮る。
キッチンいっぱいに広がった出汁の香りを嗅ぎながら、ぼおぉん……ぼおぉん、と遠くで鳴っている鐘の音をひとり聴く。
テーマ「良いお年を」
まだだっ、
まだ今年は終わっていねぇ!!
テーマ「一年間を振り返って」
腐ったミカン、なんて言葉が流行っていたけど。
本当に腐っていたのは、ミカンを入れる箱の方だったんじゃない?
綺麗に育てたミカンだって、風通しの悪い箱の中にギュウギュウ詰めにしたら腐っちゃうよ。
腐った箱が腐ったミカンを作り上げる。
でも、その箱を作り出したのは、腐ったミカンだ。
テーマ「みかん」