あれ、こんなところにドアなんて有ったかな?
いつものようにリビングの掃除をしていた時、飾り棚の裏に小さなドアを見つけた。
掌と同じ位の、凝った装飾の茶色い木のドア。
恐る恐るドアをノックしてみた。
「はいってますよー」
間延びした男の声が中から聞こえてくる。 入ってるんだ……。
もう一度ノックをすると、煩わしかったのか強めにドンッと返された。
怒ることないじゃん、声の主に対して腹が立った。
ので、金色のドアノブを指で摘んで軽くひねる。
鍵は掛かってないようだ、不用心な奴だと嘲笑う。
そのままノックもなしにドアを勢い良く開けた。
知らない男、の生首が入っていた。
鼻の奥を刺激する腐臭に、鼻を服の袖で覆っていると腐り落ちた目玉と目が合う。
「はいってんだから、開けるなよっ」
黒い液を床に垂れ流しながら怒鳴り散らす生首。
「やめろ、ワックスかけたばっかなのに!」
バッと飛び起きて叫んだ。
テーマ「夢と現実」
変だね、君と同じ気持ちなのに。
私の唇は別れの言葉をつむいでいた。
大好きだよ、心の底から。
だけどね、「好き」ってだけじゃ、どうにもならないんだ。
君を想う、想えば想うほど、駄目だった。
握りしめた君の手をそっと離して、私は一度も振り返ることなく、君の元から去った。
君の幸せを心から願いながら。
テーマ「さよならは言わないで」
壊れたラジオが垂れ流している、時代遅れなアドバイス。
その騒音が聞こえなくなるまで走ったけど。
どこまで行っても、どこへ行っても雑音は聞こえてきて。
勘弁してくれ、と両耳を塞いでも残響した。
言い返したところで相手はラジオだ、バカをみるのはいつもこちら。
そろそろ粗大ゴミの回収日なのだけれど、このラジオを引き取ってくれるだろうか。
血溜まりに浮かぶ、バラバラに壊れたラジオを。
テーマ「距離」
忘れてしまわないように。
大好きだった君のことを。
君との思い出が涙と一緒に零れ落ちて、消えてしまわないように。
固く拳を握りしめ、銀灰色の低い空を見上げた。
テーマ「泣かないで」
ローテーブルの下に敷いていた寒色系のラグを暖色系で毛足の長いものに変えて。
壁に掛かる涼しげな水辺の絵も、シンプルな抽象画にしてみた。おっ、いい感じ。
ちょっと休憩、とソファに座ってベロア生地のカバーをかけたクッションを抱きしめた。
テーマ「冬のはじまり」