しじま

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11/4/2023, 4:22:10 AM

最近、縄張りの水場に知らない奴が来るようになった。

白黒の斑、尾っぽの折れ曲がったブサイクな野郎だ。

ここはオレの縄張りだぞ、と怒ると奴も全身の毛を逆立てて威嚇仕返してくる。

始終無言の不気味な奴だ。

オレだってヒマじゃない、さっさと何処かへ行っちまえと唸って、奴がビビっている間に暖かい寝床へ戻る。

フカフカに包まって、イビキをかいて眠るデカい子分の股の間に体を埋めて、奴が追ってきてないかと聞き耳を立てた。

テーマ「鏡の中の自分」

11/2/2023, 6:21:26 PM

明日は、何をしようか。

フカフカと暖かいベッドの中、目を閉じて考える。

君と一緒に何処かへ行こうか、それとも家でノンビリ過ごそうか。

たまには気分転換に神社へ行くのも良いかもしれない、その後は近くの本屋や日替わりの店を覗くのも悪くはないな。

あんまり家でゴロゴロしてたら、あっという間にブクブク太って、君に嫌われてしまうかもしれないし。

何処に行こうか。 君は何処に行きたい?

真っ暗闇の中、いつものスーツを着込んだ君の姿が浮かんで、思わず笑みが溢れる。

差し出された君の手を取って、面白可笑しい夢の中。

君と一緒に旅をする。

テーマ「眠りにつく前に」

11/2/2023, 4:22:48 AM

 仕事帰りに頻繁に買食いをしていたツケが回ってきたようだ。

三つ揃えのベストのボタンが嵌まらない。

あともうちょっと、と頑張るがやっぱり嵌まらない。

洗面所の鏡の前、頑張らせ過ぎて緩んでしまったベストのボタンを見て、思わず溜め息が出る。

 自分ももう若くない、そろそろ自分が生まれた時の父親の年齢になる頃だ。

自分が生まれた時、父の腹は既に立派なビール腹で少し動くたびにタユンと揺れていたのを覚えている。

……あれはイヤだ、あれだけは絶対に、あれだけは!!

 もう買食いはしない、帰りは一駅手前で電車を降りて歩いて帰ろう、と軟い腹を撫で擦りながら決意した。

テーマ「永遠に」

10/31/2023, 5:03:57 PM

蛇口を捻れば、そのまま飲むことのできる綺麗な水が出てくる。

スイッチ一つで、ちょうど良い温度の湯が沸き、楽々と飯が炊ける。

学校に通い、様々な物事を学ぶ機会が与えられている。

ケガや病気の時には、誰でも病院に行って医者に診てもらえる。

自由に恋愛をして、結婚して子供をもつことができる。


これが『あたりまえ』になったら、きっと不幸だ。

テーマ「理想郷」

10/30/2023, 5:41:00 PM

人は忘れてしまう生き物だから。

君の顔も名前も、もう思い出せない。

夢の中の君は何度も僕を呼んでくれるのに、僕は君の名前を呼んであげることすら出来ない。

君の怒った顔も、泣き顔も、膨れ面も、寝顔も、笑顔も、全部、全部見ていた筈なのに。

もう何も思い出せない。

もうこれ以上、忘れたくないよ。

こんなふうに想うほど愛していた君のことを。

テーマ「懐かしく思うこと」

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