薄暗い軒下の乾いた土の上に丸まって、ゆったりと深呼吸をした。
この薄暗い軒下で私は生まれ、兄弟と一緒に育った。
母は毎日懸命に獲物を捕まえて私達兄弟を養ってくれていた。
私達が眠るまで毛づくろいをしてくれた。
母と兄弟と居る、それだけで幸せだった。
あの日、人間に捕まるまで。
母が捕まり、兄弟も捕まり、最後に私も捕まった。
生きる意味を奪われた私達は強制的に離れ離れになり、永遠のような長い月日を、私は孤独に過ごした。
もう一度、深く息を吸って目蓋を閉じる。
もうすぐ、開放される。
この無意味な一生から。
さむい、くるしい、さみしい、はやく。
私を終わらせて。
テーマ「だから、一人でいたい」
ガラス玉みたいな目。
洗脳されてる奴の目。
平気で他人を傷つけて、何が悪いのかとヘラヘラ笑ってる奴の目。
電車の前に飛び込もうとしてる奴の目。
何もかも諦めた奴等の目。
この世で一番嫌いな目。
お題「澄んだ瞳」
……まーた、なんか変なことしてる。
横殴りの雨が降るベランダで、体に黒いガムテープを巻いた君が、右に左にクネクネと揺れながら歌うような仕草をしている。
台所から窓の方を見る度に目が合って、何度目かで耐えきれずに噴いた。
点けっぱなしのテレビからは台風の進路情報が流れており、今回は関東直撃が確定らしい。
さっきよりも風雨が強くなってきて、雨が当たる度に痛そうに身体をひねる君。ッフフ。
洗面所からタオルを何枚か持ってきて窓辺に敷くと、雨でビシャビシャになった君が息を切らしながらベランダから帰ってきた。
何してたの、と聞くと「T⦿ごっこ」と君は朗らかに答えた。
テーマ「嵐が来ようとも」
雲一つない真っ青な空の元。
思い思いに着飾った騎馬武者達が、法螺貝の音を合図に草原を駆る。
海鳴りのような蹄音。
馬の嘶きや鼻息。
武者達の掛け声が辺りに響く。
馬を巧みに操り、天高く打ち上げられた神旗を取り合う伝統行事。
相馬野馬追。
一度でいいから現地で観てみたい。
テーマ「お祭り」
3食昼寝付きで養ってください。
背中の光輪を扇風機の最強ばりに回転させながら、自称神様が我が家に転がり込んできた。
最近は天界も異常気象だとかで、少し前から摂氏100℃を軽く超えていたらしい。
……それはもう地獄なのでは、と思ったが口には出さなかった。なんか、祟られそうだし。
畳の上で溶けるように寝そべる神様にポ◎リを注いでやると、余程喉が乾いていたようでグイっと一気飲みし「もう一杯」と、おかわりをおねだりしてくる。
神様という存在に死が有るのか分からないが仮に死なれてしまったら、なんだか酷い目に遭うような気がして、空いたコップにポ◎リをトポトポと注いだ。
結局、ポ◎リを3杯半飲んで身体が充分にクールダウンしたようで、そのまま寝落ちする神様。
万が一にも、寝冷えしないようにタオルケットを腹に掛けてやると、そのまま静かにキッチンへ。
神様って何食べるんだろう、と考えながらとりあえず冷蔵庫からキュウリを取り出した。
テーマ「神様が舞い降りてきて、こう言った」