頭の中で念じるだけでどんな願いでも必ず叶う、そんな超能力が欲しい。
まず、キャリーオーバー中の宝くじの一等と前後賞を貰う。
家の隣には世界堂、アニメイト、ヴァンガードを設置する。
嫌いな奴の家に定期的に隕石や雷を落としたい。
推しの誕生日を国民の祝日としよう、みんなでパーッと祝おう。
テーマ「今一番欲しいもの」
最初に名前というモノを考えたヒトは、いったいどんな名前を、誰に、付けたんだろうか。
ひとりなら必要のないモノ。
猿の延長線上のようなヒトの、群れの規模が大きくなって、簡単な身振り手振りでは意志の疎通が困難になっていって、言葉というものが生まれて。
最初は二音ほどの、簡単な名前が生まれたんじゃないだろうか。
少しずつ音を増やして、複雑にして、神聖な意味を持たせてみたり、様々な思いや願いを込めたんだろう。
遠い未来、寿限無みたいな長過ぎる名前がスタンダードになったりして。
良かった、三文字で。
テーマ「私の名前」
ヤシの木陰に吊るされたハンモックに身を預け、投げ出した脚をゆらゆら揺らす君。
彼岸休みの今日、二人で海に来ていた。
暑さ寒さも彼岸まで、というが最近は彼岸が過ぎても未だ未だ暑く、今も頭から溶けてしまうんじゃないかと思う程の強烈な陽射しがビーチに降り注いでいる。
数日前まで暑さでダウンしていたことを思えば、今日は旅館で養生しててほしかったが……。
浮き輪まで用意して、年甲斐も無くはしゃぐ様を見ていたら、流石に駄目とは言えなかった。
波打ち際で遊んでいる近所の子供をハンモックに揺られながらぼんやり眺めている君に、キンキンに冷えた飲み物を渡して隣に佇む。
君の仄白い素足が微かに揺れる度、ゴクリと喉が鳴った。
テーマ「視線の先には」
沖縄の近くで台風が発生すると、頭がぐわぁんとなる。
震度2くらいの長い横揺れのような感覚と、着ぐるみの手に頭を鷲掴みにされて少しだけ持ち上げられているような、不快感に襲われて。
また台風かあ、と憂鬱になる。
そんな時、街中をのほほんと練り歩く他人のことを心底憎らしく思ってしまう。
テーマ「私だけ」
どれだけ待っても、父は帰ってこなかった。
晩夏の夕風を背に受けながら、改札前で独り。
ゲートル巻きの脚を見つける度に顔を上げて、父ではないと判ると俯いて、またゲートルを探す。
物悲しいヒグラシの鳴き声も聞こえなくなって、赤トンボが群れて飛ぶようになっても、父は帰ってこなかった。
遠い南の島で父は死んだと聞かされた。
それから、あっという間に時が経ち、家庭に仕事にと忙しない日々を送っていた、ある日の夕方。
何とはなしに覗いた鏡の中に、父をみた。
テーマ「遠い日の記憶」