あきた。
手のひらに収まる程度に成長した青を、グシャリと握り潰す。
生温かい赤色の液体が、拳の隙間からドロドロと流れ落ちていった。
テーマ「終わりにしよう」
君達と共に生きる道も有った。
それはまるで、日溜りのような心地良い日々だったことだろう。
何度も夢見た光景、拍手喝采、笑い合い、助け合う仲間の存在。
差し伸べられた君の手を掴もうとして。
――私に光は似合わない。
逡巡の後、その手を振り払った。
拒絶され傷ついた君の顔を直視出来ず、背を向けて憎まれ口を利く。
そうして独り、暗く冷たい闇の中を歩む。
自身の信じる正義を貫く為に。
願わくは、君達と対峙することのないようにと、銀朱の月を見上げた。
テーマ「手を取り合って」
キラキラ輝いていないと価値はないの。
盛りに盛った写真を撮って、世界に発信。
毎日毎日、高級ブランドの衣服や装飾で着飾って、高いお菓子やお酒を貪りながらパシャパシャ。
高級品に取り囲まれたアタシも、価値ある存在に見えるでしょ。
家一軒ポンと買えちゃうような高級車を乗り回しても。
美男美女を侍らして、毎晩の様に遊び狂っても。
アタシ自身は、セミの抜け殻みたいに空っぽで、みっともないハリボテなのにね。
あー、笑える。
テーマ「優越感、劣等感」
だいたい五年。
それくらいで友達を切り捨てる。
別に嫌いになったからではない。
着古したお気に入りの洋服を捨てるような感覚。
もういいや。いらない。
着信拒否、アドレス変更、アカウント削除。
とてもスッキリする。
切り捨てられる友達には申し訳ないと思っているが、きっとこれからもやり続けるんだろう。
テーマ「これまでずっと」
向かいの家で事件があった。
蒸し暑い空気に混じった濃い鉄の臭いに、鼻の奥がツンと痛くなる。
外の様子を、二階の自室のカーテンの隙間からそっと覗いてみた。
紺色の制服を着た警察官が、向かいの家の門に貼られた黄色と黒のシマシマのテープを潜っていくのが見える。
なんだかドラマみたい。 不謹慎だが、そう思った。
しばらく眺めていると、グゥと腹が鳴る。
時間を確認すると、疾っくの疾うに昼飯時は過ぎていて、おやつの時間に近かった。
外に食べに行くのも億劫なので適当に出前を頼みながら階段をトロトロ下りる。
便利な世の中になったなぁ、と出前が来るまでの間、一階のリビングで暫しゴロゴロ。
ふああ、と大きな欠伸と伸び一つして、フローリングの上をコロリと転がった。
テーマ「1件のLINE」