雲一つない真っ青な空の天辺に月が浮かんでいた。
白殺し色の昼の月。
私の一番好きな月だ。
こんなに美しいのに、誰も見向きもしない。
皆忙しなく目的地に向かう、無感情に機械的に。
誰も見向きもしない、真っ青な空から降り注ぐ無数の隕石を。
輝きもしない朧げな彼の月は、地上を蠢く人々の仕舞を静観している様に見えた。
テーマ「月に願いを」
ここのところ君は、心此処に在らずで。
ねえねえ、と擦り寄っても、背中をフミフミしても、君は身動き一つしない。
死んじゃったのかな。
心配になって君の鼻をスンスン嗅ぐ、大丈夫だ生きてる。
うん、どういうこと?
君のまわりをグルグル、思考もぐるぐる。
わけがわからない、後ろ足で耳の後ろを掻き、次いで肉球を舐める。
後ろ足を踏ん張って、背を丸めて腹の毛を舐めて整える。
もう一度、君を見るけど相変わらず動かない。
テーブルの下に行き、水皿を見ると空っぽ。
カリカリの皿も空っぽで、ひっくり返ってる。
そういえば、最後に食べたのはいつだっけ。
ご飯が無いよ、と鳴くが君は動かない。
まるで、僕の声が聞こえていないみたいだ。
ああ、そうか僕。
死んじゃったんだ。
テーマ「いつまでも降り止まない、雨」
もう昔言われたことに腹を立てて、当たり散らすのは止めろよ。
後ろなんて振り返っても何にもないんだから。
俯くな、見上げるな、前だけを見ろ。
腐るな、流されるな、踏ん張れよ。
自分の力で、足で、歩いていけ。
もっと自分を信じろ。
テーマ「あの頃の不安だった私へ」
アロマンティック・アセクシャル。
恋愛ドラマは気色悪い上に意味不明だし、キスシーンは吐き気を催す。
俳優の結婚はめでたく思う、不倫は許せないとも思う。
恋愛的性的に誰かを好きにならない、というより理解できない。
親にも友達にも言ったことはない。
100%理解されないから、時間の無駄。
変な宗教とか病院とかに連絡されても困るし。
こういう人、かなり居ると思うよ。
誰だって『汚物』ぶち込まれたくないでしょw
テーマ「逃れられない呪縛」
普通であろうとした。
ごく普通の社会人として、ごく普通の一人の人間として、ごく普通に生活していた。
浮かないように、目立たないようにヒッソリと、生きてきた。
君に出会うまで。
君はキラキラしていた、君が動けば皆が目で追い、君が戯けたり笑ったりすると場が和んだ。
「好き」とは少し違う、初めての感情が芽生えて、だけど君と話すのは気が引けた。
この世を去るその時まで、ひとり静かに。
そんな自分の所に君は転がり込んできた。
殺風景なリビングが君の私物で賑やかになる。
適当に作って食べていた夕飯も、君と食べるようになって、彩りと栄養バランスを考えたメニューを作るようになった。
おいしい、とリスみたいに頬を膨らませた君が愛おしい、と感じる。
普通にしがみついて生きるのは、もうやめた。
テーマ「昨日へのさよなら、明日との出会い」