普通であろうとした。
ごく普通の社会人として、ごく普通の一人の人間として、ごく普通に生活していた。
浮かないように、目立たないようにヒッソリと、生きてきた。
君に出会うまで。
君はキラキラしていた、君が動けば皆が目で追い、君が戯けたり笑ったりすると場が和んだ。
「好き」とは少し違う、初めての感情が芽生えて、だけど君と話すのは気が引けた。
この世を去るその時まで、ひとり静かに。
そんな自分の所に君は転がり込んできた。
殺風景なリビングが君の私物で賑やかになる。
適当に作って食べていた夕飯も、君と食べるようになって、彩りと栄養バランスを考えたメニューを作るようになった。
おいしい、とリスみたいに頬を膨らませた君が愛おしい、と感じる。
普通にしがみついて生きるのは、もうやめた。
テーマ「昨日へのさよなら、明日との出会い」
5/23/2023, 5:48:19 AM