「言葉にできない」
言葉にできないほどの体験。
炭火焼き鳥のお店に行ったとき、メニューにホルモンがあった。ホルモンは苦手だったけど、人気なのでぜひ食べてと強くすすめられ頼んでみた。
しばらくして端がちょっと焦げた香ばしいホルモンがやってきた。
口に入れた瞬間衝撃的な体験をした。
味は濃厚な霜降りカルビなのに、口の中で液体になった。比喩ではなく言葉通り液体。串に刺さってるときはプルプルとしっかり刺さってるのに、口に入れたら溶ける。角煮のトロトロになった豚の脂身よりもトロトロ。
香ばしい炭火と焼き鳥の甘辛いタレの味、それと牛肉の脂の味、全部最高。
衝撃すぎて言葉にできなかった。
「誰よりも」
私が中学生のころ、誰よりも性欲が強かったように思う。地味だったし、もてないし、そもそも男の子と話すことすらなかったので実際の行為は皆無だったけど。だから親が隠していた大人の雑誌やテレビのちょっとエロいシーンを見てモンモンとしていた。当時cheese?だったか少女マンガの皮を被った女の子向けのエロマンガが流行っていて、友だちとこっそり貸し借りしていた。
高校生になると落ち着いてきて、かわいくなりたい欲はたっぷりあるのに性欲はそうでもなかった。 初めて彼氏ができたときも抱き合ったりするだけで満足で、その行為を特にしたいとは思わなかった。
大学生になって一人暮らしを始めて親の目がなくなったのに、別にしたいとは思わなかった。もったいない。
社会人になると他に考えることが多いせいか、さらに欲が少なくなった。ただ一度だけ、とんでもなく高嶺の花の男の人とお近づきになったときは爆発した。だからたぶんスイッチが入り辛くなっていただけでずっとそこにあったんだろうな。
「溢れる気持ち」
人生を楽しく生きるためにはこの「溢れる気持ち」を味わうことのできる機会を見つけることが必須だと思う。元々淡白な性格だけど、社会人になってからは楽しくてたまらない、といったことはほぼない。好きな芸能人もいないし夢中になれる趣味もない。ネットを見ていると好きが溢れて「尊い…っ!」となっている人がたくさんいる。それがアイドルだろうとアニメやゲームのキャラだろうとそんな気持ちになれるのが羨ましい。
私の場合、ごく最近、定価で買おうと思っていた高価な物がたまたまセールをしていて2割引で買えたときは、ルンルンした気持ちが抑えきれなかった。これも「溢れる気持ち」だろうし、確実に幸せを味わった。
「キス」
みんなキスに夢を持ちすぎだと思っていた。自分で自分の唇を触った感触、それがそのまま自分の唇に触れる相手の唇の感触である。ただそれだけ。それに何か不衛生な気がして気持ち悪かった。特にディープキスは大嫌いだった。でもそれは知らなかっただけだった。ある時外見や雰囲気がとても好みの男の人と出会った。顔もスタイルもずば抜けていて私なんかが話すこともできないような高嶺の花だった。…が、一生分の幸運を使い切ったのか彼が血迷ったのか、彼とキスする機会があった。彼の男っぽい匂いと唇の感触に心臓が今まで体験したことのないような動きをし始めたし、初めてもっとドロドロにキスしたくなった。その後鏡を見たら目はウルウルで頬はピンクの初めて見る艶々しい自分がいた。本能的に本気で好きな男の人とするキスは別物なんだなぁと気づいた話。