Haru

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2/18/2023, 11:40:36 AM


長い長い髪をとかしてゆく
腰まで伸びた彼女の焦茶の髪
丁寧にやさしく痛めないように
「今日はなかなか通りにくいな...」
おっとごめんよ。もっと優しくね
しっかりじっくり30分ほど
彼女の髪にそっと手を通して、上から下へとほぐしてゆく。
終わったら少し休憩。やっぱり疲れちゃうからね
それも終わったら後は寝るだけ
二人で手を繋いで寝室に行く
名残惜しいけど僕は机の上で君の手を離すんだ
彼氏を連れてきたら嫉妬しちゃうかもしれないけど、いつでも一緒にいるからね

それじゃあまた明日
おやすみ



2/17/2023, 10:34:04 AM


中学高校どっちも、2年生の時にハマったものは一生ものになるらしい

ゲームとか部活とかスポーツとか?

僕も大切なものに出会った記憶がある

友達と一生分笑い合った中学生活

思い返せばあっという間だった高校生活

かけがえのないものでした

お気に入りとはちょっと話が違うけど、本当に大切なものって実はすぐそばにあったりするよね

身近な幸せに気付けたり、些細な喜びを感じれるってすごくいい

死にたくなる時もたくさんあるけど、楽しい時もちゃんとある

なんだかよくわからないけど

幸せに生きますね

2/16/2023, 12:28:25 PM

誰よりもあなたが好きだから

だから告白できないの

サッカーボールを追いかけて

無邪気に走って笑う君

どんなに君を求めても

伝わらないと知っている

君には好きな子いるからね

毎日一緒に帰っても

友達としてしか見れないの?

次の日教室来てみたら

君はなんだか嬉しそう

どうやら彼女ができたみたい

泣きたい思いが込み上げる

でも、これでいいんだよ

私の思いは伝わらない

「俺も彼女欲しいなー」

私の思いは、伝わらない

2/16/2023, 8:00:26 AM

      私からの10年後の手紙

「成功ですね...」
「ああ...」
その研究室には二人の男がいた
試験管に入った透明な液体を見て二人は感慨のため息をつく
「この薬がたくさんの人々を救うんですね、先生...」
「ああ、そうだ。今までよく頑張ってくれた」
先生と呼ばれた男は助手らしき男の肩口に手を添える
「先生が僕を誘ってくれたあの日から、もう8年も経つんですね」
「あっという間だったよ...なんとか間に合ってよかった」
「さあ、最後の仕事ですよ、先生」
「そうだな」
男たちは実験室を出て廊下を進んでゆく
どこまでも白い洗練された廊下
二人の急くような足音だけがそこに響いていた


「あーしんどー」
8月。
燃えるような灼熱が身体中を予断なく焦がす
今日の最高気温は31度、今年に入って一番暑い日だ
こんな日に外出をしているのには理由がある
俺は大学6年生
そう、就職活動である
必死に勉強した高校時代、その甲斐あって有名大学の医学部に進学できた、できたんだが...
「はあ...なんで医学部にきたのかねえ...」
俺は血がダメだった
見るだけで体が拒絶反応を起こす
解剖などもってのほか
外科、内科、循環器内科、ほとんど無理でした...
なので仕方なく就活
こんな暑い日にせかせか頑張ってるわけです
今日受けるのは大手製薬会社の面接、失敗は許されない
「よしっ、気を張っていくか!」
やるしかないのだ


ダメだった...
面接の日から5日後
今朝届いたメールだったが、なかなか開けられず、内容を確認したのは夕方ごろ
「うそだろ...」
受け答え結構上手くいったと思ったんだが、ダメか...
これでもう12社目
自分の不甲斐なさにヤケになる
「散歩にでもいくか...」
全く、上手くいかない人生だ


「あれ?」
散歩から帰って郵便受けをのぞくと手紙が入っている
気になってとってみると、そこには自分の名前と「読んでね」という文字が書かれている
「なんだこれ...?」
家に入り手紙を開く

10年前の僕へ

やあ、こんにちは、10年前の君
僕の名前は大芝徹。君と同じ名前です
まあそれは当たり前なんだけどね笑
信じてくれるかわからないけど、僕は10年後の君です
何言ってんだって思ってる?僕もこんなのが届いたらそう思うよ
でも、ホントだから、聞いて
そっちの方の今である2023年から10年後にとあるウイルスが生まれます
そのウイルス致死率は98%
こっちの世界では表れて2ヶ月で1億人以上が亡くなってる、やばいでしょ?
僕らも急いで特効薬を作るつもりだけどかなり絶望的なんだ...
だから君に頼みたい
10年前から特効薬を作って欲しいんだ
ウイルスに関する情報は送れないんだけど、ひとつ大事な情報がある
そのウイルスにかかる一人目の人だ
僕も驚いたんだけど、このウイルス8年間も潜伏してたんだ
しかも無症状だから気付けない
症状が出て、気づいた時には遅かった、多くの人々が罹ってたからね
だからその一人目を見つけて協力させるんだ
その人の名前は、高田慎二
長崎県長崎市西浦上町出身の22歳男性だよ
君にしか頼めないんだ
どうか頼むよ


「は?」
こいつはなにを言っているんだ
大体2ヶ月で1億人って...そんなわけないだろ...
「はあ...ばからし」
大体俺は血が苦手なんだ、誰のイタズラか知らないが、もう少しまともな嘘にしてほしいもんだ
そんなことより腹が減った。こんな手紙より夜ご飯だ
体の内から感じる空腹感に耐えながら立ちあがろうと手に力を入れる
「うおっ」
足を滑らせ転んでしまった
右手に持っていた手紙が空を舞い、顔に被さる
「痛ってえ...」
手紙をとる。ふとあることに気づいた
さっきと文章が違う...?
「これ裏もあったのか...」
まだ阿保の戯言は続くのか...
くだらないとは思うが、尻の痛みが消えるまでは付き合ってやろう

とは言ったけど君は血が苦手だからね、医者なんて無理だって思うだろうなあ
だけどね、それは違うよ
君が本当に恐れているのは痛みだ
痛みは出血を伴うことが多いからね
現に僕は医者として現地を走り回ってる
研究者だってできるはずなんだよ
なあ徹、負けるなよ。
お前は確かに人より何かをうまくはできない
でもそれは最初だけだろ?
勉強だってスポーツだって死ぬほど努力したからできたんだ
俺たちは努力の才能があるんだよ
だろ?徹


努力の才能。父さんがよく言っていた言葉だ
いつも俺を励まして、応援してくれた
そんな今は亡き、父の言葉
「なんだよ...」
辛い大学生活だった
友人関係もうまくいかず、医療の道には進めないと言われ、それを誰にも相談できなかった
救われたような気がした
ある日ぽっくり逝ってしまった父さんがまた、励ましてくれているようで
胸の中がポカポカする
頬を走るように涙が溢れた
もう、迷いはなかった


「さあ、慎二さん。これを飲んでください」
「完成したんですね...!わかりました」
慎二はそう言って、もらった薬を水と一緒に飲み下した
「経過観察のためにあと1ヶ月だけいてもらいます、長い間本当に申し訳ない...」
防護服を着た男が深々と頭を下げる
「いいんです、先生が僕の人生を変えてくれたんですから」
その笑顔は屈託なく、慈愛に満ちたものだった


病室を出て、防護服を脱ぎ、そのまま外へ出る
陽気な日差しと鳥のさえずりがあたりに充満していた
「終わったよ、父さん、10年後の俺」
太陽の光がシワの刻まれた彼を祝福していた

2/14/2023, 6:17:32 PM




「それじゃあ、今日はおしまい。気をつけて、帰りなさい」
担任の中島が帰りの連絡を終えて、おもむろに席を立った
「日直、お願い」
彼のゆったりとした言葉に反応し、日直が号令をかける
「気をつけ、礼」
日直の声に促され、生徒たちも頭を下げた
ひとときの間もなく、クラスが喧騒に包まれる
心なしかそわそわとしたクラスの空気は、今日が特別であることを物語っていた
今日はバレンタイン
誰かさんの命日という話もあるが、今の日本では愛する人や友人にチョコを渡す日だ
好きな人にチョコを渡すという設定は高校生にとってとてもロマンチックなものである
中でも今年は異常、昼休みに2組のカップルができたらしい
だからこそクラスの男どもは思うのだ、わんちゃんあるかも、と
だがそれは幻想だ
どう足掻いても貰えないやつは貰えない、結局は日頃の行いである
かくいう僕もそこまで親しい女子はいない
結果はやっぱり見えている
時間を見ると4時半を過ぎていた
そろそろ部活にも行きたい時間だ
だから僕のからだ......そろそろ諦めて動いてくれっ


中央階段を四階まで登り、右の端へと進んで行く
僕の所属する部活は吹奏楽部だ
......吹奏楽部なんだけど、実はほとんど稼働していない
栄西高校の吹奏楽部はとても弱い
顧問もおらず、幽霊部員が大半であるためコンクールにも出場できていない有様
毎日来ているのは僕くらいである
音楽室の扉を開けると、埃がかすかに舞い上がった
この音楽室は第一音楽室
授業で使われているのは第二音楽室なので、ここは吹奏楽部の部室兼物置になっている
昨日までテスト期間だったこともあって埃が溜まっていたのだろう
いつもの如く窓を開け、軽い掃除に取り掛かる
特段綺麗好きというわけではないが、汚いものが好きなほど特殊ではない
音楽が大好きな身としては気になったりするのだ


準備室から椅子とトランペットのケースを取る
椅子を窓のそばに置き、楽器の準備に取り掛かった
窓の外では陸上部の掛け声や、金属バットの軽快な音が青い空を駆け巡っていた
「あのー」
「はいっ」
心臓が飛び跳ねる
反射的に顔を振り向けた
そこには高校生らしき制服を着た女子生徒が
胸に光るのは栄西の高章、少なくともうちの生徒のようだ
「......はい、どうしました?」
状況の整理が追いつかないが、なんとか対応する
「すいません、転部希望なんですけど。先生に聞いたら朝川先輩のところへ行けって言われて......」
「ああ、なるほど。僕が朝川です」
だんだん状況の理解が追いついてきた
彼女は一年生の入部希望者。なにかのきっかけで吹奏楽部に興味を持ったのだろう
だがうちの吹部は弱小の中でも弱小。満足にも練習ができないだろう
せっかく興味を持ってくれたのに惜しいが、仕方ないな
「実はうち、ほとんど活動してないんだ。入部しても満足に練習できないと思う。他の部活がいいんじゃないかな?」
「いや、この部活がいいんです!」
「うーん...どの楽器も教えられないんだよねー」
「先輩、トランペット吹いてるじゃないですか」
......思ったより食い下がってくる
まあ確かにトランペットは中学の頃からやっている
ある程度なら教えることは可能だろう
ただ、うちではコンクールにも出られず、合奏もできない
やはりおすすめできるものではないだろう、だがどうしたものか
「えっと、名前はなにかな?」
「岩下香澄です、高校一年生です」
「岩下ね。さっき転部って言ってたけど、前は何してたの?」
「陸上部です。いつも窓の下を走ってますよね?」
「ああ、確かに走ってるね」
「あれです、走るの好きなんです」
「......陸上はもうしないの?」
「そうですねー、仕方ないですね。心を奪われちゃったので」
なるほど音楽に一目惚れしたのか、その気持ちとてもわかるなあ
「音楽は好き?」
「大好きです」
そう間髪を入れずに答えた彼女
その凛とした瞳は全てを貫くような強さを持っていた
こんな情熱を持った子、うちの学校にはなかなかいない
こんな子が部活にいたらきっともっと楽しくなるだろう、そう思うとこれからの部活にすごくわくわくしてきた
もう迷う必要はない
「入部希望のプリントは僕が受け取るね。改めて、これからよろしく」
そう言って香澄の前に手を差し出す
「ありがとうございます!」
笑顔で答えた彼女は力強く僕の手を握った


「もうそろそろ終わりかな」
入部関連の申請を適当な先生に丸投げし、二人で色々な楽器を触っているといつの間にか窓の外は橙黄に染まっていた
窓のそばまで寄ってみる
赤と紺のコントラストが美しく空を飾っていた
「綺麗だな」
隣にいる香澄は僕の顔をちらりと見て答えた
「そうですね」
静かな時間が続く
「先輩」
隣で空を見上げていた彼女が口を開いた
「どうしたの?」
瞼を閉じて彼女はゆっくりと言葉を紡いだ
「私この部活が、この教室が、音楽が大好きになりました」
その声はどこか神秘的で透き通っている
香澄はゆっくりと、瞳をひらいた
「でもずっと、ずっと前から先輩と先輩のトランペットが大好きでした」

二月の温かさを含んだ冷気が二人を優しく包んでいた

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