私はあなたを忘れない。
決して忘れたりなんかしない。
我がためは 見るかひもなし 忘れ草
わするばかりの 恋にしあらねば
(後撰集789 紀長谷雄)
忘れてしまうような恋ならば、
私はそれを恋とは呼べないのです。
【勿忘草(わすれなぐさ)】
旅路の果てにあるものはいつも「別れ」だけだった。
世界から世界を渡り歩き、記録し、記憶し、語り継ぎ、その創世から終焉を見届けたのは数え切れない。
喜びも悲しみも、切なさも、遣る瀬無さも、全ての感情を揺り動かす出来事は忘れることなく覚えている。
けれど、ひとつの世界を去る間際の…あの何とも言えない空虚な思いだけは、未だに慣れることはない。
どこまで行っても自分はその世界では異端なのだと、本来存在すべきものではないと、思い知らされる。
故郷などない、帰る場所もない、止まる術さえなく、ひとつが終わればまたひとつと渡り行く風のように。
風はいつか止む。
この旅路にもいつか終わりは来るのだろう。
それまでにどれほどの別れと出会いを繰り返し、数多の人々とすれ違い、恋人たちを置いて行くのだろうか。
風が止んだ世界の果てでは、幾多の世界に置き去りにしたみなを振り返らなくてはならない瞬間が来る。
旅の終わりを願いながら、その瞬間がひたすら怖い。
まだ、終わらないで…。もう、終わらせて…。
君の隣で笑いながら、君との別れとその先に抱える不安が、静かに、ゆっくりと、胸を黒く侵食していく。
そのたびに「別れ」はもうすぐなのだと悟ってしまう。
【旅路の果てに】
あなたに届けたいものがある。
あなたに私が救われたこと、
私の感情を呼び戻せたこと、
出会えた喜びとその切なさ、
酸いも甘いも教えてくれた。
――…そして、私が生きているこの奇跡。
あなたは知らないでしょうけれど、
あなたがいなければ私は今ここにはいない。
そんなあなたにもう一度感謝を告げたかったの。
こんな無機質な冷たい電子の文字で、
あなたの訃報なんて聞きたくなかった。
【あなたに届けたい】
お題保存。
【街へ】
今もなお届く君からのメールに、
変わらない君を懐かしく思う。
…それと同時に憎らしくも思う。
君と別れる前の関係を崩したくないのは、
私の身勝手な願いなのかもしれない。
…でもね、やっぱり少し胸の痛むことはあるよ?
それでもきっぱりと嫌えないのは、
君を好きになった弱みなのかもしれないね。
君の何気ない残酷な優しさが刺さる。
そのたびに胸の痛みを覚えながら、
君に返すメールの文面を考える。
【優しさ】