街の明かりが灯る頃
私も家へと駆け出します。
息が上がっても足は止められません。
遠目に見える街の明かりを見ると
なんだか寂しくなって
泣き出しそうになってしまうからです。
街の明かりが灯る頃
私は家路を急ぎます。
誰も居ない、ひとりの家へ今日も帰るのです。
テーマ『街の明かり』
幼い頃、明け方に目覚めてしまった私がベッドから抜け出して階下に降りると、まだ誰も起きていないはずなのに突き当たりのキッチンからリンと鈴の音のような音がした。
(飼っている子猫かしら?)
そう思ってそうっと足音を立てないように扉の前まで進んで、少しだけ開いた隙間から中を覗き込めばそこに居たのは小さな光の粒達。
テーブルの上の角砂糖を囲んで楽しげにクルクルと回っていたわ。
暗闇に目が慣れてきたら、それは光の粒じゃなくて妖精で思わず
「わ!」
と声をあげてしまったら、驚いたようにこちらを見てそしてパッと消えてしまった。
大人になってからも時々思い出す。
今でも耳を澄ますとあの鈴の鳴るような可愛らしい笑い声が聞こえる気がするの。
テーマ『耳を澄ますと』
悲鳴、火、硝煙の匂い、逃げ惑う人々。
名ばかりの楽園は今この瞬間地獄と化した。
「ここも、駄目だった……」
隣にいた誰かがそう呟く。
その通り。
楽園なんて最初からどこにも無かったのだ。
テーマ『楽園』
ふぅと息を吹きかけた綿毛が風に乗って飛んでゆく。
そのまま君のところまで飛んでいけ!
テーマ『風に乗って』
「ねぇ、このまま一緒にいこうか」
ろくでもないことをまた言い出したと溜息を吐く。
そんなこと、これっぽっちも思っていないくせに。
気まぐれに振り回させるのはうんざりだ。
どうせすぐに「嘘だよ」と言うんだろう。
この日々が永遠でないことは充分分かっている。
分かっていてもその手を振り解けないのは、
どこかで己もまた望んでいるからだ。
だから、今日も手を取ってしまう。
この選択がたとえ間違いだったとしても。
テーマ『たとえ間違いだったとしても』