はじめに生まれてから今日に至るまで
幾つの出会いと別れがあっただろう。
見知らぬ街の角で
遠い昔愛し合った君とすれ違った。
また先の時代で縁が巡り合うのなら
その時には最期まで隣に居たい。
テーマ『すれ違い』
子供のように、無邪気に
笑えたのはいつまでだっただろうか。
子供のように、純粋に
夢を追えたのはいつまでだっただろうか。
いつの間にか大人になって、過ぎゆく日々をただ見送って
その身を繰って、働いて、眠って、働いて。
生きることは、あの頃想像していたより遥かに難しく
目指していた場所はあまりにも遠く。
それでも生きることはやめられず、日々足掻く。
そんな人々に、自分に、どうか多くの幸いを。
テーマ『子供のように』
渦巻く感情の波に囚われた時は、
目を閉じて、耳を塞いで、心を遠く遠くへと飛ばす。
どこがいいか。南の島……では平凡か。
月の裏側の湖で光る水面を眺めたら、
白い魚がパシャリと跳ねた。
日々は絶え間なく、緩やかに死へと向かう道筋。
その途中で、こうした束の間の休息を摂ることも
そう悪くは無いだろう?
明日もまた笑えるように、日々が優しく彩られるように。
そう願えたら、もう眠りに落ちるだけ。
テーマ『束の間の休息』
明けゆく空の境界をなぞる鳥を眺めながら
自室のベランダで煙草に火をつける。
上手く寝付けなかったからか、妙に感傷的な気分になって
まだライターのつけ方も覚束なかったあの頃を思い出す。
「へったくそだなぁ。貸してみ?」
そう笑って私からひったくったライターに
慣れた手つきで火を灯し己の煙草に火をつけてから
「ん」
とあんたはそのまま顔を近づけてくるもんだから
私はついドギマギとしてしまって。
その時吸った煙草の味なんてとてもしやしなかった。
あれから私も老いて、この街で1人生きている。
あんたの教えてくれた煙草はきっと死ぬまで手放せないだろう。
テーマ『過ぎた日を想う』
最初に私の名前をつけたのは母か
それとも父か。
もう思い出せもしないその名に
どのような意味が込められていたのか。
少なくとも私はその名に
相応しい生き方などして来なかっただろう。
「○○!」
私を呼ぶ君の声がする。
そうだ。
君が私をそう呼んだ日から
私の本当の人生は始まったのだ。
テーマ『私の名前』