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5/13/2025, 3:39:17 PM

さようなら。例え幾度と輪廻を繰り返し、貴方の中の私の声が掠れ、体温が冷え切り、姿がぼやけ、香りを忘れてしまっても。

私が貴方の記憶の海底へ沈み、粉々になったとしても。私は陽の当たらない暖かな海の中で、幸せに眠れるわ。


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『記憶の海』

5/8/2025, 2:36:40 AM

クスノキの葉一枚と木々の間から漏れた陽の光を小瓶に詰めて、私は走り出す。これが、公園に行ったことのないらしい白く陶器の肌をしたあの少女が一等喜ぶプレゼントなのだ。


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『木漏れ日』

4/15/2025, 3:28:02 AM

昔昔、私は未来を視る魔法使いだった。

画用紙一枚とクレヨンがあれば私は何にでもなれたのだから。画用紙の上の私はカラフルで可愛い服を着ていたし、目には白い星が浮かんでいた、自分の顔夜も大きなドーナツに囲まれていた。

然し、私は魔法の力を失った。鏡の中にいる私が見えるのはのは草臥れ始めた白黒のスーツ姿、カラコンで無理矢理光を入れた目、姿鏡に小さく映る食べかけのコンビニ弁当。


魔法の使えたあの頃の未来図は、既に灰になっているだろう。あの紙があれば私の今は輝いていたのだろうか。



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『未来図』

1/27/2025, 8:41:45 AM

柔らかな地の上ではるか昔を思い返す。どれだけ君を驚かせようとしても、いつも冷静な顔してするりと回避されていた。何百回やっても君に勝てた一度たりとも事はなかった。

あれから何十年の年月が経ったのだろう、私は今日も一足先に雲の上で待ち続けている。いつか君が土産話を沢山持って此方へやってくることを待ち焦がれて。

今度君に会えたなら、後ろから背中をトンと押して驚かせてやろうと決めている。初めて君に勝てるチャンスだ、逃してなるものか。背を押して振り向いたら、私は間抜け面した君にこう言ってやるのだ。



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『わぁ!』

1/26/2025, 6:37:33 AM

いつまで経っても、私のノートは白紙のまんま。人は私の事を面白く無い人間だと声を潜めて云うけれど、それでも私はペンを握る事が億劫で堪らない。

だって、書き始めてしまえばいつか終わらせなければいけない。それがどう仕様も无く厭だもの。



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『終わらない物語』

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