昔昔、私は未来を視る魔法使いだった。
画用紙一枚とクレヨンがあれば私は何にでもなれたのだから。画用紙の上の私はカラフルで可愛い服を着ていたし、目には白い星が浮かんでいた、自分の顔夜も大きなドーナツに囲まれていた。
然し、私は魔法の力を失った。鏡の中にいる私が見えるのはのは草臥れ始めた白黒のスーツ姿、カラコンで無理矢理光を入れた目、姿鏡に小さく映る食べかけのコンビニ弁当。
魔法の使えたあの頃の未来図は、既に灰になっているだろう。あの紙があれば私の今は輝いていたのだろうか。
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『未来図』
柔らかな地の上ではるか昔を思い返す。どれだけ君を驚かせようとしても、いつも冷静な顔してするりと回避されていた。何百回やっても君に勝てた一度たりとも事はなかった。
あれから何十年の年月が経ったのだろう、私は今日も一足先に雲の上で待ち続けている。いつか君が土産話を沢山持って此方へやってくることを待ち焦がれて。
今度君に会えたなら、後ろから背中をトンと押して驚かせてやろうと決めている。初めて君に勝てるチャンスだ、逃してなるものか。背を押して振り向いたら、私は間抜け面した君にこう言ってやるのだ。
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『わぁ!』
いつまで経っても、私のノートは白紙のまんま。人は私の事を面白く無い人間だと声を潜めて云うけれど、それでも私はペンを握る事が億劫で堪らない。
だって、書き始めてしまえばいつか終わらせなければいけない。それがどう仕様も无く厭だもの。
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『終わらない物語』
それは煌々と輝いていて、頑丈で、希望をもたらす物である。
そう信じていた時期もあったなと、ふと蒲公英の綿毛が地に舞い降りるかのように唐突に思い出した。
大人になった今でさえ、理想的な未来への鍵は見つからない。俺は扉の前で立ち尽くし、地団駄を踏むばかりなのだ。
未来への鍵
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浅縹(あさはなだ)の空が、艶やかな濃い桃色の秋桜の愛らしい存在感をよく引き立たせている。
そんな淡い秋らしい光景を眺めつつ、涼しげのあるカジュアルなブラウスに薄い色のジーンズ姿の夏に取り残された自分は、この秋の絵画には異物だろうなと思い苦笑してしまう。
主役の桃色をよそに空の優しい浅縹色が私の視界を支配するばかりであった。夕暮れ時、アパートの窓枠に座る貴方の気に入っていた、色褪せた空色のカーディガンにひどく似ていたから。
『秋晴れ』
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