恋物語
あの子が気になって仕方ない
いつからなのかは 分からないけど
目で追ってしまうのは
目につく存在だからなのか
それとも
恋なのか
でも
名前を知りたいとは
まだ思わない
どんな瞬間に
「あの子を知りたい」と
思うのだろう
楽しみもあれば 答えもいらない
まだ
物語は始まっていない
愛があれば何でもできる?
私にとって「愛」とは
存在意義の証明
愛されていると思えば
愛していると感じれば
世界は何色にも色づく
でも
その逆になれば
ノイズのように薄く
影にさえなれない
経験と記憶は語る
「愛さえあればなんでもできる」と
そう信じて
突き進むこともできるだろう
けれど
非現実と打算の中で
人は愛だけでは生きていけない
それでも私は
愛のある世界も
愛のない世界も
生きていく
楽園
真っ白なキャンパスと 数時間 睨み合う
画題は『楽園』
名を与える前の 静けさ
善も悪も まだ 息をしていない
何を描けばいいのか
コンテを持つ手は 動かない
私にとっての『楽園』は
この白のままにある
歓喜を置けば
すぐ隣で 喪失が 息をする
無垢は
知らないという かすかな罪
その奥で 小さな欲望が見え隠れする
一本の線で
すべては 分かれてしまう
だから私は
まだ 引かない
引けない
「まだ時間はある」
それでも
指先は わずかに震えている
あなたは何を描きますか
刹那
君が僕のところに堕ちてくる
それは
若葉から
雫がひとつ
落ちていく
秒速0.4m/s
それよりも儚い
瞬き
言葉にできない
あなたのいない世界は
音がひとつ 足りない
ねぇ覚えてる?
コンビニの帰り道 手を繋いで
少し遠回りしながらお気に入りのラブソングを
一緒に聴いた事を
あなたはいつも
どうでもいいことでふざけて
私を困らせて
それでも最後には笑わせてくれた
ねぇ覚えてる?
どうしようもないことでぶつかった日
小さな言葉ひとつで
あなたを傷つけた
「もういい」って背中を向けたあなたを
追いかけられなかった夜
本当はただ
「ごめん」って言いたかっただけなのに
言葉にできなくて‥‥
もしあの時
あなたの手を強く引いていたら
もしあの時
素直になれていたら
まだ
あなたを見つめていられたのに
好きだったよ
本当に 好きだった
うまく伝えられなかった分まで
今さら溢れてくる
あなたのいない世界で
あの日のラブソングが流れてくる
届かない名前を呼びながら
戻らない日々をなぞりながら
消えない想いを
抱えたまま 生きていく
言葉にできないほどの
私の
私だけの恋