ある日のわたし

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たった1つの希望

どこか懐かしい
雨のにおいがした
ぽつり、ぽつり、と水滴が落ちる教室の窓
雨は 何か大切なことを伝えてくる

灰色に染まる校庭
傘もささずに立つ君をみた瞬間
ふいに 胸が
遠い時代の名前を呼んだ

雨に打たれながら並んでいた記憶
戦火の中で、手を離した記憶
約束を、果たせなかった記憶
「——やっと会えた」
たった1つの希望 それは…

「君を必ず見つける」

込み上げてくるこの愛しさが
一滴ずつ
僕の鼓動に落ちてくる

しとしと、強まる雨
その激しさが、
私の胸の奥を叩く

誰もいない校庭の真ん中で、
私はひとり、雨に打たれる
雨は いつも何かを伝えようとしている

——そのとき

昇降口の影から、あなたが現れる
雨を裂くように、まっすぐこちらへ歩いてくる

目が合った瞬間、
世界が軋んだ

炎の匂い
崩れ落ちる城壁
雨ではなく、灰が降る空
あなたは鎧を纏い
私はあなたの袖を握りしめる

「生まれ変わっても、必ず見つける」

あのとき、血に濡れた手で
そう誓ったあなたの声は遠い記憶

でも——

あなたは、今世では手を伸ばす

「もう、離さない」

震える声は、
前世で途切れた続きだった

私は、濡れた制服のまま頷く

今度こそ

戦も、時代も、何も奪えない未来を
二人で

3/3/2026, 1:01:10 AM