かまぼこ

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7/17/2025, 10:35:09 AM

スーツを着た男は一本の切り株を見ていた。
切り株の断面を見るに、それはかなり大きな木だったとみる。男は木の断面を撫で、つぶやいた。
「君が笑える世界を作りたかった。」
そのきがまだ葉をはやしなびいている頃、少年はその木の下で少女に出会った。少女の顔は火傷の跡がまだらにあり、綺麗とはお世辞でも言えなかったものの、美しい顔立ちと髪をしていた。赤子の頃の怪我で左手が不自由な少年は少女と自分を同じ境遇の人間だと思い、声をかけた。二人はすぐに仲良くなった。
「こんな顔じゃ、私、お嫁にいけないかしら。」
少女が少年に話しかけた。すると少年は、
「じゃあ俺は、この木陰でずっと眠っていよう。」
文脈の合わない返しに、少女は首を傾げた。
「木陰から漏れる陽を浴びて日焼けしたら、君と同じような顔になれるからね。」
その言葉に、少女は目に涙を浮かべて笑うのだった。

7/15/2025, 1:58:47 PM

高層ビルの屋上に男が立っていた。
足元には脱いだジャケットとネクタイが綺麗に畳んで置いてあり、その上に濁ったコンタクトと「遺書」
と書かれた封筒が置かれていた。
「あなたがこんな所にいるなんて、珍しいわね。」
その見覚えのある声に男が振り向くと、そこには女がいた。
「久しぶり。5年ぶりかしら。」女は口元は笑っているものの、目は怒りをむき出した鋭いものだった。
「ああ、君か。」男は女を認識しても変わらず無気力だった。
「・・・呆れた。5年前は、私が泣きながら話した悩み事にさえも、能天気な明るい言葉で励ましていたあなたが、こんな終わりかたをしようとするなんて。」
女は胸ポケットからタバコを取り出し、火をつけた。
「悪いけど、私は止めないわよ。」
「ありがとう。助かるよ。」男は女に笑ってみせた。
「変わったね。」
「あなたもね。」
二人はしばらく会話の余韻に浸っていたが、しばらくして煙の混じった風がその余韻に終止符を打った。
「では、さようなら。」男は屋上からさった。動かない屋上のドアを背に向けて、女はかつて男の立っていた場所にしゃがんだ。そして違和感を感じた。
『どうして男は靴を脱がなかったのだろうか。』
男が履いていた靴は、5年前に2人で選んだ靴だったという事を、女はその違和感を追うように気づいた。
「そう・・・変わってなかったの。」
女のまだ鋭い目から涙が流れた。
「やっと、二人きりになれたのね。私達。」

7/14/2025, 10:56:58 AM

買っているハムスターが暑いと言って回し車の下で寝始めたら夏の始まり。