スーツを着た男は一本の切り株を見ていた。
切り株の断面を見るに、それはかなり大きな木だったとみる。男は木の断面を撫で、つぶやいた。
「君が笑える世界を作りたかった。」
そのきがまだ葉をはやしなびいている頃、少年はその木の下で少女に出会った。少女の顔は火傷の跡がまだらにあり、綺麗とはお世辞でも言えなかったものの、美しい顔立ちと髪をしていた。赤子の頃の怪我で左手が不自由な少年は少女と自分を同じ境遇の人間だと思い、声をかけた。二人はすぐに仲良くなった。
「こんな顔じゃ、私、お嫁にいけないかしら。」
少女が少年に話しかけた。すると少年は、
「じゃあ俺は、この木陰でずっと眠っていよう。」
文脈の合わない返しに、少女は首を傾げた。
「木陰から漏れる陽を浴びて日焼けしたら、君と同じような顔になれるからね。」
その言葉に、少女は目に涙を浮かべて笑うのだった。
7/17/2025, 10:35:09 AM