『冬になったら』
冬になったら何をしようか。
雪合戦はしたいよね。雪だるまも作りたいかも。こたつで丸まってみかんも食べたいし。
まあ、君といられたらなんでもいいんだけどね。君が笑いながらそんなことを言うから、余計に愛おしくなった。
冬になったらどうしても君を思い出してしまうから。
寒いねって笑いあった声も、いいじゃんって繋いだ手も、雪を踏み込む君の姿さえ覚えているのに、君はどこにもいないから。
だから、冬は好きじゃない。
いい感じになりませんでした。無念です。
ひとつめとふたつめ繋がってません。
『はなればなれ』
心と体がはなればなれになりそうな私を繋ぎ止めて、絶え間ない愛情を与えてくれたのはあなただったから、そんなあなたが幸せであってほしいと思いました。
もしも来世がなればなれで始まったとしても、私はきっとあなたを見つけるから心配しないで。
それが偶然であろうと、運命にしてみせるから。
だから、笑って。
『子猫』
子猫がにゃあ、と可愛らしく鳴いて、私がそれに呼応するようにみ゛ゃあとかう゛っとか声を上げて、母と父が笑う。
それが幸せ。
『秋風』
秋風に吹かれて、思いきってボブにした髪が揺れる。
まだ慣れないその長さは、おはよー!と元気に隣に並ぶあなたの好きな長さだ。
「髪切ったんだね」
「うん。ちょっとね」
あなたが好きだって言ってたから、と言う言葉は呑み込む。私にそれを伝える勇気はまだない。
「似合ってるよ」
「…ありがと」
待ちわびていたけど、いざ言われると思ったより嬉しかった言葉に、顔が紅くなるのを感じる。
大丈夫かな。ばれてないかな。
そんな私の心配なんて知らないあなたが今日の授業の話なんかをし始める。
相槌を打ちながらちょっとは意識してくれたかな、なんてあなたを見上げた私に微笑みを返すから、もう完全にノックアウトされてしまった。
『また会いましょう』
BLです。お気をつけください。
来世でもまた会いましょう、なんてお前が息を引き取る寸前に溢した言葉が、100年を経て令和に生まれ変わった今でも、耳の奥に木霊し続けていた。
すれ違う人混みの中に、見慣れた坊主頭がちらついた気がした。
一瞬歩を止めて、それでも変わらずに流れる人の波と点滅を始める信号機に押されるように向こう岸へたどり着く。
気のせいだ、と自分に言い聞かせながらも、瞳はその姿をただひたすらに探していた。
――生まれたときから、前世の記憶というものを持っていた。
ただひたすらに、愛しい人がいたことを、何よりも鮮明に覚えている。
その人を、ずっと、ずっと、探し続けていた。
見つからない坊主頭から意識をひっぺがして、視線を前に戻す。
まっすぐに見つめた小道のその先、坊主頭がこちらを向いていた。
心臓がどくりと跳ね回って、喉が凍りついたように音を発さなくなる。
世界から音が消えて、2人きりのような錯覚に陥った。
急いで駆け寄って、やっぱり私より低い肩に置く。
その温度は、これもまた前世と変わりがなかった。
「つきしまぁ…」
驚きのあまり凍りついたかと思った声帯が、それでも呼び慣れたその名を呼ぶために震える。
さっきまで私を見つめていたにも関わらず、その男は、驚きを前面に写し出した声で私の名を紡いだ。
ふふ、昔より分かりやすくなったんじゃないか。
そこは変わったんだな。
なんて軽口が出てきそうで、だけど、今言葉を発したら震えていることがばれてしまいそうで、やはり何も言えない。
何も言えない代わりに、たまらなく愛おしいその身体を抱きしめた。
「また会えましたね」
「……うん」
月島の声も震えていることに気づいた。
歓喜と、愛情と、幸福とをごちゃまぜにした感情が押し寄せる。
どうしようもなく、好きで、好きで、しょうがなかった。
「会えないと思ってました」
「私は、会えると信じていた」
前世もあわせて見るのは3回目くらいの月島の涙を拭って、耳元でゆっくり、確実に伝わるように言葉を綴る。
「もし会えない運命でも、必ず探しあてていた」
お前が大切だから、と念押しのように続ける。
この続きは、まだ言えないままだ。
だけど、いつか、言わせてくれないだろうか。
お前がこの出会いを偶然だと思わないように、必然だと呼べるように、ただひたすらに愛するから。
ゴールデンカムイより鯉月です。
鯉登さん目線頑張ってみました。むずいっすね。
薩摩弁も好きなんですけど今回は標準語です。