『また会いましょう』
BLです。お気をつけください。
来世でもまた会いましょう、なんてお前が息を引き取る寸前に溢した言葉が、100年を経て令和に生まれ変わった今でも、耳の奥に木霊し続けていた。
すれ違う人混みの中に、見慣れた坊主頭がちらついた気がした。
一瞬歩を止めて、それでも変わらずに流れる人の波と点滅を始める信号機に押されるように向こう岸へたどり着く。
気のせいだ、と自分に言い聞かせながらも、瞳はその姿をただひたすらに探していた。
――生まれたときから、前世の記憶というものを持っていた。
ただひたすらに、愛しい人がいたことを、何よりも鮮明に覚えている。
その人を、ずっと、ずっと、探し続けていた。
見つからない坊主頭から意識をひっぺがして、視線を前に戻す。
まっすぐに見つめた小道のその先、坊主頭がこちらを向いていた。
心臓がどくりと跳ね回って、喉が凍りついたように音を発さなくなる。
世界から音が消えて、2人きりのような錯覚に陥った。
急いで駆け寄って、やっぱり私より低い肩に置く。
その温度は、これもまた前世と変わりがなかった。
「つきしまぁ…」
驚きのあまり凍りついたかと思った声帯が、それでも呼び慣れたその名を呼ぶために震える。
さっきまで私を見つめていたにも関わらず、その男は、驚きを前面に写し出した声で私の名を紡いだ。
ふふ、昔より分かりやすくなったんじゃないか。
そこは変わったんだな。
なんて軽口が出てきそうで、だけど、今言葉を発したら震えていることがばれてしまいそうで、やはり何も言えない。
何も言えない代わりに、たまらなく愛おしいその身体を抱きしめた。
「また会えましたね」
「……うん」
月島の声も震えていることに気づいた。
歓喜と、愛情と、幸福とをごちゃまぜにした感情が押し寄せる。
どうしようもなく、好きで、好きで、しょうがなかった。
「会えないと思ってました」
「私は、会えると信じていた」
前世もあわせて見るのは3回目くらいの月島の涙を拭って、耳元でゆっくり、確実に伝わるように言葉を綴る。
「もし会えない運命でも、必ず探しあてていた」
お前が大切だから、と念押しのように続ける。
この続きは、まだ言えないままだ。
だけど、いつか、言わせてくれないだろうか。
お前がこの出会いを偶然だと思わないように、必然だと呼べるように、ただひたすらに愛するから。
ゴールデンカムイより鯉月です。
鯉登さん目線頑張ってみました。むずいっすね。
薩摩弁も好きなんですけど今回は標準語です。
『スリル』
スリル満点!と謳われたジェットコースターに、僕と君は今横並びで座っている。
え、なんで。なんでこうなったの。僕怖いの苦手なんだけど。
何もかもの元凶の君は楽しみだね、なんて快活な笑顔を見せた。
なにがだよ、という文句は呑み込んで、少しだけ震えているかもしれない声で質問を投げ掛ける。
「怖い?これ」
きょとんと効果音がつきそうな顔をした君が、みるみる笑顔になっていく。
「怖いの?ジェットコースターが?」
「聞いただけだよ」
「けっこう怖いよ」
ひゅっ、と喉が鳴った。
これ、今からでも降りられるかな。
そんなことを考えた途端に、発車いたします、とアナウンスがかかる。
詰んだ。
がたん、がたんと恐怖を煽る音を立てながら車体がゆっくり上昇する。
「わくわくするね」
隣の君が言葉通りの声色で呟くけど、それに返事をするほどの余裕は僕にはない。
何になるわけでもないけど必死にバーを掴んでいると、車体が止まった。
目の前には青い空。あ、綺麗、とか思ったその瞬間、車体が急加速で落下した。
「ぎゃあああああ!!」
自分から出たとはおおよそ信じられないほどの大声が空を切り裂く。
え、やばい。なにこれ。やばい。死ぬ。
今測ったら最高記録が出るんじゃないか、くらいの握力でバーを握る僕とは反対に、君はきゃあああなんて笑いながら両手を空へと掲げる。
正気か?
若干引いた。なんなら血の気も引いた。
もうその後は怖いし喉は痛いし君はおかしいしで大変だったけど、体感一時間くらいだった空の旅が終わって地上に戻った頃には楽しかったと言えるほどに回復していた。
すぐ目の前にあったベンチでアイスを食べて休みながら楽しかったね、と君が笑う。
怖かったけどね、と返す僕には、膝が震えるとか喉が嗄れたとか以上に困っていることがあった。
ジェットコースターを降りてから、君を見ると、どきどきする。
今までの経験則からそれは恋だとはっきりわかるわけで。
これが噂の吊り橋効果か?
僕ってけっこう単純だったのか。
なんて余計なことを考えてみるけど心臓は収まることを知らない。
あー、これからどうしよう。
心の中で頭を抱えながら、次はお化け屋敷行こうよ!と笑う君に頷いて見せた。
個人的には君が吊り橋効果を期待してジェットコースターとかお化け屋敷とかに行ってたら嬉しいです。
全く関係ないんですけど私が初めて乗ったのは志摩スペイン村のピレネーなんですよね。
怖かったです。
母と乗ったんですけど母は笑顔で引きました。
母は君タイプだったみたいです。私は僕タイプでした。
半分くらい意識失ってたんですけど、足元に見えた青空がトラウマすぎて吊り下げ式はもう乗らないって決めました。
『飛べない翼』
飛べない翼を持つ私に、あなたはそのどこまでも飛んでいけそうな立派な翼をもって美しい景色を見せてくれました。
だから、そんなあなたが空を飛び疲れたときに休める地上の家でありたいと思います。
『ススキ』
地元が田舎で、学校帰りにススキが生い茂っている公園で友達と遊んでいた記憶を思い出した。
毎日遊んでて、放課後が楽しみでしょうがなかった。
今は高校が違くなって遊ぶことは減ったけど、会ったら毎日遊んでた頃の雰囲気に戻れる関係性と友達が大好きです。
『脳裏』#78
あなたの優しい笑顔を脳裏に焼きつけて、今から始まる手術室の戸をくぐった。
脳裏によぎるあなたの笑顔には気づかないふりをして、目の前で微笑むあなたとは違う人に微笑みを返した。
母もこのアプリを使っているんですよね。むしろ私が母に勧められて始めたんですけど。
たまに母の作品を見るんですけど(お気に入りに追加してます)すっごいいい文章のはずなのに脳裏に母の「いい話やろ?やろ?」と言う顔がちらついてハートが押せないんですよ。
ほんとにどうしましょう。