『チョコの行方』
買ってしまった…どうしよう。
高校3年間、同じクラスの同じ部活のかずま。
くだらないじゃれ合いする仲…男友達。
…のハズだった。
2年生の夏…県大会に行けるかどうかの試合。
私は、途中ケガで棄権…結果負けた。
こっそり、会場の裏で落ち込み泣いてると
かずまが来て、頭にタオルを落とし、ポンポンて
頭を叩いて、黙って立ち去った。
たったこれだけで…私は…恋をした。
それからも、意識しつつ関係は変わらず
3年生の三学期になってしまった。
進路はバラバラ、きっとなかなか会えなくなる。
焦りから、らしくもないチョコを買ってしまった。
かずまは、今先生に呼ばれて教室にいない。
放課後、みんな帰った教室に…私1人。
半分ヤケになって、かずまの机にチョコを投げ入れ
私は、足早に帰った。
はるか、3年間同じクラスの同じ部活。
女子で唯一気の合う…友達。
…じゃない。好きな奴。
1人遠くの高校へ入学した俺。
バスケ部が強くて有名で…それで来た。
元々、人見知りでぶっきらぼうだから、
なかなか友達も出来ずにいつもいた。
高校でも変わらず、みんな遠巻きに見てる中
「かずま!おはよう!宿題やった?」
こんな俺に屈託ない笑顔で接してきたのが、はるか
コイツの笑顔と態度に救われて、気付いたら
好きになってた。
ばかやってる間に、どんどん友達が増えて
関係壊したくなくて…3年三学期になってしまった
俺は、卒業後…地元を離れる。
そんな相談などを先生としてたり、
バレンタインを忘れていた。
教室へ戻る廊下。
はるかが俺の机に何か入れたのが見えた。
それから、足早に帰るはるか。
急いで、机の中を確認する。
…キレイにラッピングされた箱…チョコだ!
今日…バレンタインかっ!?
義理かもだけど、チョコを用意してた事に
赤面しつつも、告白のチャンスと思った俺。
チョコ片手に、昇降口まではるかを追いかける。
…いた!3年間見慣れた後ろ姿に歩き方。
「はるかっ!」
俺の声に振り向く。手にしたチョコ見て
「あっ!…」と声を出す。ちょっと赤い顔して。
さぁ、俺。次は俺が勇気出す番だ。
はるかの側へ歩いていく。
少し気まずそうなはるか。
もう今日しかない… 素直に気持ちを伝えよう。
「…はるか、俺…」
『待ってて』
待っててね、もう少しで会えるから。
早く、早く会いたいんだけどね。
『ぽこん』
あなたも、私の想いに答えるように、反応する。
あなたは、どんな未来を掴むのだろう。
私達は、あなたを幸せに、穏やかに暮らせるように
導けるのかな。
不安が少しばかり襲う。
『ぽこん』
お腹を軽く蹴られる。
そうだね。大丈夫だよね。
あなたは、こんなにもお腹で元気なんだから。
そして
愛しい旦那様との結晶なのだから。
早く、早く会いたいね。
早く、早く…春にならないかな。
『ぽこん、ぽこん』
あなたも待ち遠しいのね。
待ってるからね、安心して生まれてきてね。
「伝えたい」
僕は彼女にどれくらい伝えられたろう?
彼女にどれくらい届いただろう?
君がこの世からいなくなって…
何度、生き返らせてと神様に祈ったか。
でも、もう遅い。
こんなに早く離れ離れになるなら
もっと優しくするんだった。
もっと話しを聞けば良かった。
…きっと彼女は、こんな僕の姿は望んでないよな。
前を向くために、僕は彼女の遺品整理を始めた。
1つずつ、彼女の荷物を整理して
この服はあの時の、このイヤリングはあの時の
この靴は…思い出がどれにもあり
自然と涙が浮かんできた。
落ち込みかけたその時、1つの箱が目に入った。
可愛いお菓子の缶で、なんとなく開けてみる。
…中には、交際時からの手紙が入っていた。
お互い、手紙の交換が好きでよくしたのだった。
懐かしく思いながら、見ていくと
真新しい白い花柄の封筒が出てくる。
最近、書いたもののようだった。
僕宛ての手紙…急いで封を開ける。
便箋2枚の手紙、綺麗な彼女の字。
内容は…こんなどうしようもない僕への感謝。
彼女が書いてるような優しい綺麗な人間じゃない。
自分への腹立たしさに、また泣けてきてしまう。
手紙の最後に…
『どうか、自分を責めないで。貴方と共にした時間
は何より幸せでした。』
『だから、どうか…私を見守ってね。私も強く生き
るから。貴方がいない現実を受け入れて、前を向い
ていきます。』
えっ…僕は…死んだのか?
途端に色々思い出す。
あの日は、彼女の誕生日で
彼女が食べたいって言ったケーキ屋に行って
帰り道僕は、信号待ちをしていて…
暴走した車が突っ込んできたんだ。
…僕は…そのまま。
全てを思い出した時に部屋のドアが開いた。
喪服姿の彼女。手紙を取りに来たようだ。
「はぁー…死んでくれて良かった。ずっと息苦しか
ったのよね。」
「この手紙も、ほんと面倒だった。早く捨てなき
ゃ。お金があるから結婚したけど…ほんとダルかっ
た。」
スマホを取り出し誰かに電話している。
「あっ♡私よ。うん…葬儀が終わったら行くわね」
「もちろん♡愛してるのはずっと貴方だけ。」
僕は名前を聞いて、血の気が引いた。
「ずっと好きよ。ハルト♡」
僕の親友……僕は……僕は……。
『この場所で』
今日この場所で、第2の人生をスタートさせる。
私が気に入ったチャペルのある、結婚式場。
幸せたっぷりに微笑む旦那様。
試着たくさんして、選んだ純白のドレス。
好きな花を混ぜ込んだブーケ。
…大好きな人達にお祝いされながら
父と共にバージンロードを歩く。
あぁ、なんて幸せな日なんだろう…
1歩1歩…旦那様に近づくドキドキする瞬間。
夢なら覚めないでーっ!!
はっ!…にやけた顔のまま目が覚める。
夢だったかー!寝る前に見た映画の影響ね。
DVDのパッケージをチラ見。
もう一度寝よ………う??
いやいやいやいやいやいやいやいやッ!
待て待て待てっ!
やっぱり今日は結婚式じゃないのっ!?
カレンダーの大きな赤丸を見て
慌ただしく私は準備をする。
独身最後の門出がこんな感じとは…
最後まで、私らしいのかな 苦笑?
今日この場所で、私は結婚式を挙げます!
旦那様、ふつつか過ぎる私だけど…
末永く仲良くしましょうね♡♡
誰もがみんな、幸せになりたくて
誰もがみんな、みんなに好かれたくて
誰もがみんな、みんなに嫌われたくない
上辺だけ取り繕う関係…でいいのかな。
SNSが更新される度、
グループLINEが盛り上がってる度、
私は妙な緊張をする。…少し怖くもある。
全部を投げ捨てて、
なにも気にならない、世界になったら良いのに…。
スマホ画面見ながら、ため息をつく。
「嫌ならやめたらいいのに。」
「そんな縛りつけた関係、何をあなたにしてくれるの?」
「いざと言う時、きっとすぐに誰もいなくなる。」
「現実の付き合いを大切にしなよ。周りをよく見なよ。」
一匹狼タイプのクラスメイトが
そういうと、あっという間にいなくなる。
彼女はかっこいい、何にも縛られず自由。
私だって、彼女みたいになりたい。
誰もがみんな、しがらみを脱ぎ捨てたい。
誰もがみんな、権力から逃れたい。
誰もがみんな、自由になりたい。
誰もがみんな、独りが怖いんだ。
誰もがみんな……………。
……貴方はどうですか?