「伝えたい」
僕は彼女にどれくらい伝えられたろう?
彼女にどれくらい届いただろう?
君がこの世からいなくなって…
何度、生き返らせてと神様に祈ったか。
でも、もう遅い。
こんなに早く離れ離れになるなら
もっと優しくするんだった。
もっと話しを聞けば良かった。
…きっと彼女は、こんな僕の姿は望んでないよな。
前を向くために、僕は彼女の遺品整理を始めた。
1つずつ、彼女の荷物を整理して
この服はあの時の、このイヤリングはあの時の
この靴は…思い出がどれにもあり
自然と涙が浮かんできた。
落ち込みかけたその時、1つの箱が目に入った。
可愛いお菓子の缶で、なんとなく開けてみる。
…中には、交際時からの手紙が入っていた。
お互い、手紙の交換が好きでよくしたのだった。
懐かしく思いながら、見ていくと
真新しい白い花柄の封筒が出てくる。
最近、書いたもののようだった。
僕宛ての手紙…急いで封を開ける。
便箋2枚の手紙、綺麗な彼女の字。
内容は…こんなどうしようもない僕への感謝。
彼女が書いてるような優しい綺麗な人間じゃない。
自分への腹立たしさに、また泣けてきてしまう。
手紙の最後に…
『どうか、自分を責めないで。貴方と共にした時間
は何より幸せでした。』
『だから、どうか…私を見守ってね。私も強く生き
るから。貴方がいない現実を受け入れて、前を向い
ていきます。』
えっ…僕は…死んだのか?
途端に色々思い出す。
あの日は、彼女の誕生日で
彼女が食べたいって言ったケーキ屋に行って
帰り道僕は、信号待ちをしていて…
暴走した車が突っ込んできたんだ。
…僕は…そのまま。
全てを思い出した時に部屋のドアが開いた。
喪服姿の彼女。手紙を取りに来たようだ。
「はぁー…死んでくれて良かった。ずっと息苦しか
ったのよね。」
「この手紙も、ほんと面倒だった。早く捨てなき
ゃ。お金があるから結婚したけど…ほんとダルかっ
た。」
スマホを取り出し誰かに電話している。
「あっ♡私よ。うん…葬儀が終わったら行くわね」
「もちろん♡愛してるのはずっと貴方だけ。」
僕は名前を聞いて、血の気が引いた。
「ずっと好きよ。ハルト♡」
僕の親友……僕は……僕は……。
2/12/2023, 2:49:13 PM