枯葉
私の家はバス通りに面していて、
家の前には街路樹がある。
トウカエデという種類の木で、秋には葉が紅く紅葉して綺麗だ。
しかし家が丁度バス停の前で、葉が積もっていると歩きづらいため、葉が落ちる時期には毎日掃除に追われることになる。
そしてお隣さんはバイクと自転車を取り扱うお店で
謎の風の出る器具で落ち葉をこちらに吹き飛ばしてくる。
なんだか面白いので気にしていないけれど。
今年の秋も枯葉を集めるのを風物詩の一つとして楽しみにしている。
今日にさよなら
いつもなかなかさよならできない
失敗したり、何かやらかしたりすることが多くて
それが寝る前や数日後に突然フラッシュバックしてきて落ち込む
自分ひとりが困るだけならいいけれど
人に迷惑をかけてしまったときが一番堪える
落ち着いてと言われるので私は慌てているのだろう
失敗すると不安になって余計に焦ってしまう
間違えたことは忘れずにもう間違えないように
ひとつひとつ落ち着いて思い出せるようにしよう。
誰よりも
小学生の頃、地味で静かな私とたまに世間話をしてくれる男の子がいた。
背の低い普通の子だった。
けれど、その子はいつの間にか不登校になった。
違うクラスになったのもあって理由は何も分からなかった。
中学にあがって、その子と同じクラスになった。
しばらくはほとんど学校に来ないままで、
担任の先生がよく家庭訪問しているようだった。
ある日久しぶりにその子が学校に来て驚いた。
なんとなく、外見が変わっていたからだ。
言葉で言い表すのは難しいけれど、ひなっとして
目に光が無くて、少し覇気がないように見えた。
久しぶりに来て席が分からないけれど誰かに聞くのも難しそうだったので、
教卓の上の表を取りに行って一緒に確認した。
その間その子はうっすら微笑んでいたけれど、
一言も話さなかった。
それからしばらくして、その子は美術部の男の子達と仲良くなって、美術部に入ってきた。
私も美術部だったので同じ教室で絵を描きながら
彼が日に日に変わっていくのを見ていた。
個性的なメンバーしかいなかったけれどアットホームな部活だったので、彼も馴染むことができた。
それから月日はあっという間に流れて
中学最後の文化祭。
壇上で美術部の男子達とダンスを披露して
バク宙まで決めて会場を沸かせた彼を見て
とても嬉しくなった。
その時の彼は誰よりも輝いていたから。
10年後の私から届いた手紙
10年前の私へ
この手紙を読んでいるあなたは今、どんな生活をしているのでしょう。
私はもうほとんど忘れてしまいましたが、アルバイトや大学のサークルの活動に参加しつつ、春休み、夏休み以外は課題に追われる日々でしょう。
私は、あなたが占いなどは好きなのに確定している未来をあまり知りたがらないことを知っています。
なので私が辿ってきた道のりについて教えることは出来ませんが、10年間で必ず得るものと失うものがあることはもう分かっていることだと思います。
得るものも失うものも、その経験が糧となります。
今、自分がどう行動すれば後悔しない結果になるのか考えながら日々を過ごしてくださいね。
バレンタイン
毎年バレンタインデーには、父親に手作りチョコを作っている。
手作りチョコと言っても、ただ板チョコを溶かして可愛い形に固めただけのものだ。
今年は板チョコ2枚を溶かして家にあった小さな銀色のトレイにラップをして流し入れて固めた後、
クッキーの型抜きでハートとお花の形にした。
その上に余ったチョコをスプーンで盛って、名前の分からない銀色のつぶつぶなどでかわいく飾る。
今日はたまたま家にひとりだったので、テレビでアニメ鑑賞しながらのんびり作業をした。
小皿に並べて夕食後に渡すと、父親はとても喜んでくれた。
そして板チョコを溶かして固めただけのチョコなのに普通のチョコよりも美味しかったらしく、
一度溶かすと美味しくなるのかな?と言われた。
父親は最近なぜか今までより仕事が忙しいので、疲れにチョコの甘さが染みたのかもしれない。
分からなかったので、私の愛情じゃないかなと返した。