誰よりも
小学生の頃、地味で静かな私とたまに世間話をしてくれる男の子がいた。
背の低い普通の子だった。
けれど、その子はいつの間にか不登校になった。
違うクラスになったのもあって理由は何も分からなかった。
中学にあがって、その子と同じクラスになった。
しばらくはほとんど学校に来ないままで、
担任の先生がよく家庭訪問しているようだった。
ある日久しぶりにその子が学校に来て驚いた。
なんとなく、外見が変わっていたからだ。
言葉で言い表すのは難しいけれど、ひなっとして
目に光が無くて、少し覇気がないように見えた。
久しぶりに来て席が分からないけれど誰かに聞くのも難しそうだったので、
教卓の上の表を取りに行って一緒に確認した。
その間その子はうっすら微笑んでいたけれど、
一言も話さなかった。
それからしばらくして、その子は美術部の男の子達と仲良くなって、美術部に入ってきた。
私も美術部だったので同じ教室で絵を描きながら
彼が日に日に変わっていくのを見ていた。
個性的なメンバーしかいなかったけれどアットホームな部活だったので、彼も馴染むことができた。
それから月日はあっという間に流れて
中学最後の文化祭。
壇上で美術部の男子達とダンスを披露して
バク宙まで決めて会場を沸かせた彼を見て
とても嬉しくなった。
その時の彼は誰よりも輝いていたから。
2/17/2023, 10:02:26 AM