どこにも書けないこと
私は小学3年生まで頑張れば人は不思議な力で空を飛べると本気で信じていた。
普段はそんなに前のことは忘れてしまうけれど、
下校中、道で飛べるかなとくるくるぴょんぴょん
しているところをバス停のおばさんに凝視されたのが恥ずかしすぎて今でも覚えている。
あの時、私は少し大人になったのかもしれない。
もう二度とバス通りで飛ぶ練習はしたくない。
I LOVE…
私には尊敬している人がいる。
私はその人の顔も声も知らない。
知っている名前が本名なのかさえ分からない。
ただ、その人の描く物語に恋をした。
言葉選びから感じたその人の繊細な物事の捉え方
一つの世界を文字だけで創造できるほどの
膨大な知識量と経験を積んだ大人の価値観
美しい世界設定と覚えきれないほどの登場人物達
スリルと穏やかさのある日常の描写
本業の仕事をこなしながらほぼ毎日更新を続けて、
なのに読むほどに内容は濃くなっていくばかり。
この世界の四季が移り変わっていけば
物語の時間も同じように進む。
そうやって何年も丁寧に積み重ねられた物語は
まるで遠い場所にあるもう一つの世界のようで。
こんなに素晴らしい世界を描ける人が
同じ世界の同じ時代に生きている。
今自分が見ている太陽も、星や月も、
その人が見ていたのと同じもの。
そう考えて幸せな気持ちになっていたのを
今でもよく覚えている。
この世界ではもう物語の続きが更新されることはないけれど
もしかしたら今もあの場所で
物語の続きを描き続けているのかもしれない。
(物語:薬の魔物の解雇理由)
3/1コミカライズ1巻発売!
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優しさ
ふんわり柔らかな印象ばかりだったけれど
それだけではないのかも。
表面的な優しさではなくて、
心根が優しい気遣いのできる大人になりたい。
小さな子や小動物に向ける優しさとはまた違う。
相手の気持ちや周りの状況に敏感に対応できる
けれど自分の意思もしっかり持てるような
そんな人になれるかな。
海の底
多くの色を含んだ太陽の光は
海に落ちて広がっていく。
海が青く見えるのは、
赤色系統の光はすぐに海に吸収されていって
見えなくなってしまうかららしい。
深海にはほとんど光は届かず、
かろうじて一番吸収されにくい青色の光だけが
届くか届かないかというくらい。
目を凝らしてもどこまでも真っ暗闇な空間を想像すると、私は少しだけ恐ろしく感じた。
けれど、そんな過酷な環境だからこそ
陸とはかけ離れた生態や容貌をもつ生き物ばかり。
人はまだほとんど深海を知らない。
知らない、という響きには
たくさんのロマンや可能性が詰まっている気がして
なんだかわくわくしてしまう。
深海については想いを馳せることくらいしかしないけれど、
身近なところから誰も知らない何かを探してみたいと思った。
閉ざされた日記
持ち主がいなくなって
誰にも読まれなくなった日記は
この世にどれだけあるだろう。
私は日記用の手帳を二冊持っている。
一冊は小学1年生から中学までのもので
特別な日のことだけが書かれている。
もう一冊は高校から書き始めたもので
日々の出来事を綴っただけあって
人に見せるのは恥ずかしい黒歴史と化している。
もし自分の死期が近いと分かったら
後者は絶対に存在すら知られないように
確実な方法で処分するだろう。
ここまで考えて、
私は今までかなりのリスクを冒して日記を書いていたのだと気づいた。
人はいついなくなるのか分からないわけで、
そもそも日記はいつでも書けるように机の上に置いてあって隠してすらいない。
つまりそれはいつあの日記を家族に見られても
おかしくはないということ。
それでも日記を書くことは続けていきたいと思う。
書くことも、あとで見返すことも楽しいから。
ただ、黒歴史の部分のページは
読むだけでも辛いので隠そうか少し迷っている。