飛べない翼
養鶏場のような場所で
飼っている鶏を見せてもらったことがある。
ずっと狭いところに閉じ込められて
自分だったら気が滅入ってしまうなと思ったけれど
きっとあの子達は外の世界すら知らないのだろう。
そう考えると、小屋の中の鶏のように
私にも知らない世界があるのだとしたら
人生のかなりの部分損していることになるのかも
しれない。
色々なところに目を向ければ
自分の世界を少しでも広げることができる気がする
ススキ
人通りのない道を歩いていると
日の光があたって輝くそれを見つけた。
一斉に風に揺られる姿がなんとも魅力的で
持って帰って飾れないだろうかなどと思ってしまう程だった。
けれど、きっと
この場所で見るからこその美しさなのだと気づいて
そっとその光景を目に焼きつけた。
いつだったか知り合いが教えてくれた。
ススキの葉の中央には白い線が通っているのだと。
見知った植物だと思っていたのに
細かいところまでは見ていなかったのだと気づいて
はっとしたのを今でも覚えている。
道端の小さな雑草にも名前があって、
たくさん生えていれば土に栄養があることを教えてくれる。
普段見ていなかった、身近で小さなものほど
新しい発見を与えてくれるかもしれない。
哀愁をそそる
秋の夜道。
こんな帰り道には月を眺めたくなる。
見上げた月は、
朧月のようにぼんやりとしているわけではなく
けれどもいい具合に雲がかかって
なんとも言えない存在感を放っていた。
ただ美しいだけのようなのに、
物悲しい気持ちがおこるのはなぜなのだろう。
きっと、人の心は複雑で
たとえそれが自分のものでも全てを知ることはできないのだろう。
眠りにつく前に
ひとり静かな暗闇の中に
よく過去の出来事が浮かび上がってくる。
普段は騒がしく忙しない毎日の中に
うまく溶け込んでいて出てこないくせに。
楽しい思い出も月日が経ってから思い返すと
なぜだかすこし寂しくて切なくなることがある。
思い出の中の人達は
今は簡単には会えなかったり
二度と会えなくなってしまったりした人ばかりで
今思い出しても何かが解決するわけではないのに
無駄に睡眠時間が削られてしまう、
早く寝なければ
そんなことをふと思ってまた目を閉じてみる。
永遠に
今ここに自分がいるという事実は変わらない。
今の私の気持ちも今の私のものだから
未来の自分にだって変えられない。
変えられないからこそ慎重になりたい。
未来に消えない傷をなるべく残さないように。
今の自分の気持ちを今の自分が
一番よく聞いてあげられるように。