シリーズもの 2/10

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7/3/2023, 10:14:27 AM

「なぁ、あんちゃんはこの道の先に何があると思う?」
道とはいえなくも無い大地を踏みしめ歩く。
人に言わせれば砂漠、だろうか。
西暦にせん___何年だっただろうか。
もはやその辺の記憶も曖昧だが、
チキューオンダンカ、で大地はほぼ砂になった。
大人たちは我先にどこかに向かっていって、
残ったのは俺ら孤児だけ。
………正確には孤児と、物好き、詐欺泥棒。
先程から俺の周りをうろちょろしているこの男は、
おそらく後者だろう。
夜光街の残骸で話しかけたのが間違いだった。
次の街までついていく、と宣ったこいつは、
見たところ物資を何も持っていない。
こいつ、ぜったい詐欺泥棒だ。
孤児院の仲間が話していたから間違いない。
まともな教育を受けてない俺らを馬鹿にして、
こいつならいけると思ってやがるんだ。
くそ、くそ!
俺だって、俺だって親が死ななかったら!
なんて思っていてもしょうがねえ。
次の野営でどうにかこいつを撒こう。
「ちょっと、無視しないでよ。俺ちゃん傷ついちゃう」
「勝手に傷ついとけ」
「ひどい!」
そしてしばらくいっしょに歩いてわかった。
こいつ、うざい。
ずっとひっきりなしに話しかけてくる。
「あ、そうそう、」
「何?」
こうも不機嫌そうに返事しているのに、
こいつはどうにも諦めない。
ああ腹立つ。
「あんちゃんの名前、教えてよ」
「嫌」
「え、えじゃあ俺ちゃんが教えたら教えてよ。
俺ちゃんの名前、ハイキヒンって言うんだ。」
「約束してねえよ。ってハイキヒン?なんかどっかで
聞いた気が...」
「本当?俺ちゃんいまいち記憶なくてさ。
藁にも縋る思いなのよ。」
「...キョウ」
「えっ今日?」
「名前!キョウ!気が変わった!お前にしばらく付き合ってやる!!」

7/3/2023, 6:08:43 AM

日差しが眩しい。
「久しぶりの晴れなんだもん、当たり前でしょ!」
ずっと空をおおっていた暗い海が乾いて、
外出禁止令が無効になった。
それでもなんか、
自分の気分は沈んだまま。
一生このまま溺れてくのかも。
「どうしたん?」
隣に君が居てくれて良かった。
本当にそう思うよ。
だけどそれでもおっこちる。
人生で出会う太陽のひとつはきっと君だ。
確かにそう感じる。
けれど君じゃ僕の静かな沈没に気づけないだろ?
そんなもんさ。

6/30/2023, 11:04:47 AM

赤い糸なんて信じない。
だって固く結ばれてたって、
いつかはきっとほどけてしまうでしょ。
接着剤でくっつけるのは、
きっとほんとの愛じゃない。
それでも、私たちならさ
ずっとほどけないって、
信じてる。

6/8/2023, 10:37:34 AM

岐路に立つ。
人生の岐路に立つとかいうけど、
実質あたしの人生は詰んでる。
定期試験100点中20点だったし、
LINEで誤爆するし、
親とは3日たっても喧嘩してるし。
あーあ。あたしの人生ってなんだったんだ。
今すぐ飛び降りたいけど、あたしの部屋は一階だ。
つらい。つらたん。
怖いから推しに逃げて、
推ししか勝たん👊👊👊とかやってるけど、
何も悩み事なさそうに見えてても、
本当のあたしは、わたしは、ずっとつらいんだ。
今回の定期試験はいっぱい勉強した。
せんせいに何回も聞きに行って解けるようになった!
はずだった。
LINEも、ちゃんと確認して送った!
...はずだった。
間違えて、友達の友達に送ってしまった。
親とは和気あいあいしてます!
親子関係は良好です!
親ガチャなんて要りません!!!
、はあ。
親ガチャが嫌いなのはホント。
だって自分が惨めになっちゃう。
親ガチャでSSRを引いたなら、
今までの家族はなんだったんだろ。
それに、なんだかんだで情を持ってる。
親は子どもを無条件に愛してるわけじゃない。
それでいうとあたしの人間関係は100点中40点とか。
バッチリ赤点。
うん、良かった。
赤点で良かった。
このままじゃあたしの人生、全部赤点かも。
でも、もういいや。
努力したって報われない。
報われるのは、すごいひとだけ。
あたしはそこにいないや。
人生の岐路。
岐路にちなんでキロメートル先までいこうかなんて。
ばっかみたい。
ひがんにいこ。
それでこの悔しさも収まるはず。
この虚しさが報われるはず。
さよなら、あたしの大嫌いな劣等生。
ばいばい、明日からのあたし。

6/7/2023, 10:15:52 AM

世界の終わりにあなたと。
あのでたらめニュースは本物だったみたい。
わたし、嘘だと思ってた。
だって、本当に信じられないわ。
高校生のときの予言が、今になって実現するなんて。
そう、夫と出会ったのも高校生の時。
たまたま隣の席になって、
その次も同じく隣で...。
今思うと、凄い確率だったんじゃないかしら。
ふふっ、神さまも祝福してくれていたのね。
わたしは貴方に告白されたとき、正直迷ったのよ。
この人と一生 生きて大丈夫なのかしらって。
でも、本当の本当に杞憂だったわ。
だってあれから33年。
子どもに恵まれて、今度孫も生まれるんですって。
わたしが居なくなっても、
あたらしいいのちがあなたのまわりでかがやくから。
だからどうか泣かないで。
わたしはあなたの笑顔が大好き。
ちょっと照れ屋さんなところも、
わたしの誕生日を必ず祝ってくれるところも、
散歩のときに手を繋いでくれるところも。
わたしはあなたから数え切れないくらいの
プレゼントたくさん頂きました。
もう死んだっていいって思うくらい幸せだった。
だけど、孫の顔が見られないのは少しだけ残念。
大好きなあなたへ。
いつまでも愛してます。
体に気を使って、3食きちんと食べるんだよ。
あなたってばすぐご飯抜くんだから!

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