「なぁ、あんちゃんはこの道の先に何があると思う?」
道とはいえなくも無い大地を踏みしめ歩く。
人に言わせれば砂漠、だろうか。
西暦にせん___何年だっただろうか。
もはやその辺の記憶も曖昧だが、
チキューオンダンカ、で大地はほぼ砂になった。
大人たちは我先にどこかに向かっていって、
残ったのは俺ら孤児だけ。
………正確には孤児と、物好き、詐欺泥棒。
先程から俺の周りをうろちょろしているこの男は、
おそらく後者だろう。
夜光街の残骸で話しかけたのが間違いだった。
次の街までついていく、と宣ったこいつは、
見たところ物資を何も持っていない。
こいつ、ぜったい詐欺泥棒だ。
孤児院の仲間が話していたから間違いない。
まともな教育を受けてない俺らを馬鹿にして、
こいつならいけると思ってやがるんだ。
くそ、くそ!
俺だって、俺だって親が死ななかったら!
なんて思っていてもしょうがねえ。
次の野営でどうにかこいつを撒こう。
「ちょっと、無視しないでよ。俺ちゃん傷ついちゃう」
「勝手に傷ついとけ」
「ひどい!」
そしてしばらくいっしょに歩いてわかった。
こいつ、うざい。
ずっとひっきりなしに話しかけてくる。
「あ、そうそう、」
「何?」
こうも不機嫌そうに返事しているのに、
こいつはどうにも諦めない。
ああ腹立つ。
「あんちゃんの名前、教えてよ」
「嫌」
「え、えじゃあ俺ちゃんが教えたら教えてよ。
俺ちゃんの名前、ハイキヒンって言うんだ。」
「約束してねえよ。ってハイキヒン?なんかどっかで
聞いた気が...」
「本当?俺ちゃんいまいち記憶なくてさ。
藁にも縋る思いなのよ。」
「...キョウ」
「えっ今日?」
「名前!キョウ!気が変わった!お前にしばらく付き合ってやる!!」
日差しが眩しい。
「久しぶりの晴れなんだもん、当たり前でしょ!」
ずっと空をおおっていた暗い海が乾いて、
外出禁止令が無効になった。
それでもなんか、
自分の気分は沈んだまま。
一生このまま溺れてくのかも。
「どうしたん?」
隣に君が居てくれて良かった。
本当にそう思うよ。
だけどそれでもおっこちる。
人生で出会う太陽のひとつはきっと君だ。
確かにそう感じる。
けれど君じゃ僕の静かな沈没に気づけないだろ?
そんなもんさ。
赤い糸なんて信じない。
だって固く結ばれてたって、
いつかはきっとほどけてしまうでしょ。
接着剤でくっつけるのは、
きっとほんとの愛じゃない。
それでも、私たちならさ
ずっとほどけないって、
信じてる。
岐路に立つ。
人生の岐路に立つとかいうけど、
実質あたしの人生は詰んでる。
定期試験100点中20点だったし、
LINEで誤爆するし、
親とは3日たっても喧嘩してるし。
あーあ。あたしの人生ってなんだったんだ。
今すぐ飛び降りたいけど、あたしの部屋は一階だ。
つらい。つらたん。
怖いから推しに逃げて、
推ししか勝たん👊👊👊とかやってるけど、
何も悩み事なさそうに見えてても、
本当のあたしは、わたしは、ずっとつらいんだ。
今回の定期試験はいっぱい勉強した。
せんせいに何回も聞きに行って解けるようになった!
はずだった。
LINEも、ちゃんと確認して送った!
...はずだった。
間違えて、友達の友達に送ってしまった。
親とは和気あいあいしてます!
親子関係は良好です!
親ガチャなんて要りません!!!
、はあ。
親ガチャが嫌いなのはホント。
だって自分が惨めになっちゃう。
親ガチャでSSRを引いたなら、
今までの家族はなんだったんだろ。
それに、なんだかんだで情を持ってる。
親は子どもを無条件に愛してるわけじゃない。
それでいうとあたしの人間関係は100点中40点とか。
バッチリ赤点。
うん、良かった。
赤点で良かった。
このままじゃあたしの人生、全部赤点かも。
でも、もういいや。
努力したって報われない。
報われるのは、すごいひとだけ。
あたしはそこにいないや。
人生の岐路。
岐路にちなんでキロメートル先までいこうかなんて。
ばっかみたい。
ひがんにいこ。
それでこの悔しさも収まるはず。
この虚しさが報われるはず。
さよなら、あたしの大嫌いな劣等生。
ばいばい、明日からのあたし。
世界の終わりにあなたと。
あのでたらめニュースは本物だったみたい。
わたし、嘘だと思ってた。
だって、本当に信じられないわ。
高校生のときの予言が、今になって実現するなんて。
そう、夫と出会ったのも高校生の時。
たまたま隣の席になって、
その次も同じく隣で...。
今思うと、凄い確率だったんじゃないかしら。
ふふっ、神さまも祝福してくれていたのね。
わたしは貴方に告白されたとき、正直迷ったのよ。
この人と一生 生きて大丈夫なのかしらって。
でも、本当の本当に杞憂だったわ。
だってあれから33年。
子どもに恵まれて、今度孫も生まれるんですって。
わたしが居なくなっても、
あたらしいいのちがあなたのまわりでかがやくから。
だからどうか泣かないで。
わたしはあなたの笑顔が大好き。
ちょっと照れ屋さんなところも、
わたしの誕生日を必ず祝ってくれるところも、
散歩のときに手を繋いでくれるところも。
わたしはあなたから数え切れないくらいの
プレゼントたくさん頂きました。
もう死んだっていいって思うくらい幸せだった。
だけど、孫の顔が見られないのは少しだけ残念。
大好きなあなたへ。
いつまでも愛してます。
体に気を使って、3食きちんと食べるんだよ。
あなたってばすぐご飯抜くんだから!