「……意味がないことってなんだろう。……占星術は私の将来には必要のない事だ、なんの意味もないことだとお祖父様も、大人たちも遠ざけようとするんだ」
今にも泣き出しそうな顔を下幼い王子様が腕の中に大事そうに抱きしめる本は、大人たちに見つからぬよう幼い従者が幼い王子様の為に持ってきた本だ。
「…………」
「星が好きなことは本当に『意味がないこと』? 今の私にはとても意味のあることなのに」
「……意味がないことなんてありませんよ」
幼い従者は幼い王子様を宥める為にそう口にする。
勝手な大人たちからすればきっと、このやり取りも意味のないものに見えるのだろうか。
20231108 意味がないこと
あなたは いつも うつろなめで こくうをみている
わたしのことなんて みてくれない
わたしのことをすてたあなただけど わたしは あなたをすてないよ
あなたが わたしをみてくれなくても そのぶん わたしがあなたをみつめるから
あなたはわたしで わたしはあなた
もともとはおなじもの
いつかはきっと きえると わかっているけれど
そのときくらいはわたしをみてほしいな
20231107 あなたとわたし
降り注ぐ雨。
思えば人生の転機が訪れる時は雨の時が多かった。
降り注ぐ雨。
時に痛みを伴うほど強く、そしてはげしく心を揺さぶり、打ちのめす。
けれども、そんな日ばかりではないことを知った。
降り注ぐ柔らかい雨。
浄化と共に固まった心に染み込み、新たな芽吹きとなる。
20231106 柔らかい雨
亡き友との約束のため、夢中になれるものを探し続けていた。
探し続けながらも見つからないだろうという諦めが何処かにあった。
そんな中で、あの偉大な魔女のおこした奇跡は長年の絶望すらも吹き飛ばし、漸く見つけることができた夢中になれるものであり、そして彼女の存在そのものが――。
20231105 一筋の光
あれからどれ程の年月が経過しただろうか。
爪痕などもうここには残されてはいない筈なのに、それでもこの地には決して消えぬ哀愁が漂っている。
偉大な魔女のおかげで恐怖は薄れたとはいえ、完全に消え去ることは無いだろう。
ただ一人、この場で生き残ってしまった理由を未だに時折考えてしまう。
けれども、今だけは――。
20231104 哀愁をそそる