とりぷるぺけ

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10/17/2024, 6:39:17 AM

 “いのち”と呼ばれものを授かってから今まで、一度も“ひかり”と言われるものを見た事がない。
 “いろ”というものも知らないし、会話する相手の“かお”というものも分からない。
 ただそれらには種類があって、個性があるらしいと聞いた。
 個性については理解している。対話を重ねればそれは見えなくても得られる情報だ。
 生憎“かお”の個性は全く微塵も認識出来ないが、その人格の個性は認知できる。

「リリオ、先にいくね」

 友人の震えた声が離れていく。
 今日はそれほど寒くないのに、どうした事だろうか。
 そういえば最近、風邪が流行っているという。
 心優しい友人も感染してしまったのかもしれない。

「風邪、早く治るといいね」

 返事はない。
 遠くからグシャリと果物が潰れるような音がした。
 視界の端に何かが映る。
 初めて見えたそれは、とても綺麗な——。

「ねぇ、もしかして……アレが“ひかり”?」

 背後にいるであろうクラスメイトに声をかけると、クスクスと忍び笑いを漏らした何人かが近づいてきて。

「アレは“いのち”だよ。すぐに消えちゃうから、もっと近くで見てごらん」

 背中を押されて足を踏み出す。
 そこに地面の感触は。

3/20/2024, 12:32:43 PM

 少しずつ欠けていく想いを、留めておかなければ。
 朝、目が覚めたその時。
 夢の内容を覚えていることがある。
 楽しい夢や悲しい夢、白と黒の濃淡だけで表現された世界、或いは色彩に溢れた景色。
 思い出したくもないものから、ずっと心に留めておきたいものまで。
 記憶は常に曖昧なもので、特に夢に関してはその日のうちに消えてしまうことが多い。
 だから夢の出来事を綴る、『夢日記』をつける。
 そうするとこんないい夢が、こんな悪い夢が、そう振り返れるようになる。
 中には早死にするという人もいるけれど、私には関係ない。
 私の命は永いとは思えないから。
 それなら私は、私の人生を豊かにするものの一つとして書き残したい。
 もちろん、悪い夢は捨ててしまうけれど。
 楽しい事は特に記憶から失われやすいから、文字に変換して記録しておきたい。
 夢が失われる前に。
 夢から完全に醒めてしまう前に。
 なんて、ね。