Nanase

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12/1/2022, 11:54:05 AM

運命の赤い糸なんて私は絶対信じない。
そんな都合の良い物があったら私と彼の距離はもっと近付いている筈だもの。
彼を想う年月が私よりも短い子達の方が彼のそばに居られるのが納得出来ない。出来る筈ない。
部室に行くといつも彼は誰かと話しているの。その途端に脳味噌が燃え尽きそうなくらい熱くなるのに、逆に頭の隅の方が冷え切っていく気もして、毎度その感覚に吐き気がする。絶対に交わらないと分かっているのに望んでしまう私が悪い、なんて上から目線な言葉は必要ない。そんな事私が一番分かっている。
赤い糸が私の小指に結ばれていない事くらい。

ねぇ、もし絶対に越えられない壁越しに私の言葉が届いたら、私達の距離はもう少し縮まるのかしら。

#距離

11/30/2022, 10:21:52 AM

君を救いたいと思った。
あまりにも優しい君を救いたいと思った。
自分の幸せより他人の幸せを願うような子で、自分の幸せの欠片を渡してしまえる子だった。自分の中に仕舞い込んでいた宝物だった筈なのに。
そんな君が好きだ、大好きだ。だからどうか、自分を蔑ろにしないで欲しい。本心を押し殺して君が笑うのを見るのは苦しい。自分本意だけど許してくれ。
俺は俺の大事な人しか大事に出来ないから、君が幸せをあげた人を大事にする事は出来ない。
君が涙を流さないように。

君が本当の笑顔でいられるように。

#泣かないで

11/29/2022, 10:51:01 AM

いつものように友達と学校までの道を歩いていると、マフラーの隙間から漏れ出る息が白い事に気が付いた。それを伝えたら、友達は笑って「本当だ!」と騒ぎ始める。その笑顔を見たら楽しくなってきて、もっと冬の訪れを感じたくなってきた。
すれ違う人の眼鏡が曇っている。女子高生の靴下が長くなっている。紅葉が枯れ落ちて道の端に集められている。
季節の変わり目は、何もないのに、何かあるような気がして楽しい。
なんでもない通学路でさえも冬の足跡がところどころにあって、ふとした瞬間に消えそうだけれど、確かにそこにあった。

あと少し、もう少し。

#冬の始まり

11/28/2022, 12:00:56 PM

雀の鳴き声と朝日の眩さに脳が起きろと要求してくる。しかしながらこの冬場で布団の温もりも捨てがたい。乱雑に置かれたスマホの画面を見ると、布団に潜っているせいで暗い視界が一部だけパッと明るくなった。まだ7時。今日は休みだから、まだ眠れる。
温もりに身を任せようと思った時、すぐ隣にあった重みがなくなったような気がして慌てて飛び起きる。
見ると、彼がシャツを見に纏い、何事も無かったかのように普通のサラリーマンになっていた。
首元では昨日付けた鬱血痕が存在を主張している。
体に溜まっていた温もりが冷えていく気がした。
まだ、もう少し、待って。
彼のシャツを掴むと皺が出来た。怪訝そうな顔をした男が「何」と聞いてくる。冷ややかな目。お前はもう必要ないという目。思わずゾッとして手を離した。

玄関戸が開けられ、力強く閉められる音がする。寒いからか見送りに行く気も起きない。
特別な情を彼が必要としていない事は分かっていた。分かっていたから私も彼を選んだ。じゃあなんだ、愛着を持ってしまった私のせいなのか。いや、そうか。
まだ終わらないでほしいと思う。せめてこの冬が終わるまでは続いてくれ。少しでも熱がないと私はきっと崩れてしまうから。

微かにシーツに残る彼の体温、匂い、痕跡。顔を埋めて、目を瞑る。
冬はまだ終わらないらしい。

#終わらせないで

11/27/2022, 11:59:55 AM

純で無垢できれいな愛を

血を混ぜた歪な狂愛を

もどかしく秘めた恋心を

憎しみとも言い表せるぐちゃぐちゃな愛を

ただ、焦がれた貴方に伝えたいと思っただけなのに。

#愛情



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