冬晴れ
ぼくには幼馴染がいる
今現在猛吹雪の中で
隣を歩いてる訳だが…
ねぇ?
…ん?
今の会社入ってどれくらいだっけ?
8ヶ月くらいかな?
なんで?
そろそろ気になる女性できたかなと
いやー
まだ覚えること多くてそれどころじゃないよ
やっぱりなー
でもさー
食事には誘われたよ
あー仲良いメンバーでとか?
それが女性の上司と二人きりなんだよねー
はっ!!!?
あんまり調子に乗るなよ
そういうとズカズカと歩き出した
その瞬間
風が強まり雲の切れ間から太陽が顔を出した
陽に照らされた幼馴染はとても綺麗だ
ぼくの言葉にできない言葉
ぼくは彼女が好きだ
他の女性は目に入らない
待ってよー
いつも通りの空気でいつも通りの展開
ぼくはいつもこの空気が好きだ
走るぼくを横目に太陽は上機嫌に空気を暖めだした
雪の静寂
頬に触れた雪は淡い熱を帯び液体へと姿を変えてゆく
しかし真冬の山の中は自分の耳鳴り以外は何も聞こえない
文字通り誰もいないからそうなのだが…
麓の小さな山村では収穫期に熊が出るようになった
俺もそうだが狩猟ができる者は行政により全員駆り出された
そのせいもあって一匹また一匹と熊はその頭数を減らしていった
雪も疎になってきた頃
一頭だけ大きな熊が出没するようになった
この時期に出没すると冬眠せずに目の前にある食料を食い尽くす傾向にある
…人間も含め
この小さな村では厳冬期までに十七名が襲われた
幸いなことに死亡者はいない
皆口を揃えて言った
「白い熊だ」
と
俺たちは四人で組み追い込みをかけた
雪山の中で気は張ってたが野生の感性に負けた
アルビノで見えないのもあり仲間が二人襲われた
多分即死だ
俺は撃ったが当たっても動きが止まらない
二発目を打ち込んだが向かってくる
三発目を外し俺は弾を込めながら離れていた最後の一人に叫んだ
「逃げて人を寄越してくれ」
俺は直後に撃った
心臓に確実に当たったが振りかぶった腕は止まらない
右肩から左脇腹にかけて抉られた
白い熊も俺も胸を赤く染め仰向けで雪に沈んだ
猟銃を扱うようになって聞こえる耳鳴りだけが俺には聞こえていた
…頬に触れた雪は淡い熱を帯び液体へと姿を変えてゆく
雪が紅く染まってきた
耳鳴りが小さくなっていく
俺にとって初めての無音の世界で舞い散る雪を眺めながら
灯火は消えそうになっていった
明日への光
明日も来いよ
…ぼくは虐められている
原因は多分虐められてた子を庇ったからだ
ただの喧嘩に持ち込もうとしたが
取り巻きの一人に羽交締めにされ
それ以降サンドバッグになっている
帰宅すればアル中の親父に殴られる
誰も見てくれない
誰も聞いてくれない
生きてる意味あるのかなぁ
もう涙も出なくなった
殴られるのは慣れた
傷は治る
でも気持ちは…
重い足で古びた見知らぬマンションの屋上へ行く
夜の街の景色は綺麗だなと思った
一つ一つが暖かい家なんだろうな
ぼくは柵を越える
「もういいや」
重力に任せようとした瞬間
「クソがき!
人のマンションを事故物件にするなや!」
首に腕が回ってた
また明日がくるんだ
星になる
窓の外を見ながら親指と人差し指で輪っかを作るが
少しだけ隙間をあける
「つかまえた!」
私はこうやって毎晩遊んでる
新型コロナウィルスが確認されてから
病院では患者への面会は制限
そういうのを知りつつ横目で見てたが
流行が収まってから検診に行くと何だか影が写っていたと言われその後の精密検査で即入院
若くしてレベル4らしい
レベルはマジでゲームだけにしてくれよ
もう長くはないとの説明
面会制限を撤廃した病院はあまりなく身内もいないので
誰も来ない
星になれるかわからないが
何年もかけて地球上の誰かに光を届けたら
一瞬でも捕まえてくれるかな?
虚無感の中
数滴の滴を垂らす
目を閉じて今日も想う
起きる前に星になれますように
君と紡ぐ物語
僕は家に一番近く一番安い飲み放題のスナックへ
週3〜4日通ってる
理由は家では映画を見ながら飲むのだが
ウィスキー1.8lがすぐになくなること
割りもののこと
氷のこと
面倒だからだ
店の中はカウンターに椅子が5脚
ボックスは4人掛けが4つという所だ
スタッフはママに従業員の女の子が二人
いたりいなかったりな黒服が一人
まぁいつもピン飲みで面倒みてもらってる
そうしていつも通りに飲みに行く
僕は大体カウンターの入り口から2番目に座る
混んできたらすぐ帰られるようにだ
今日は黒服がいない
噂だと日中も働いてるとか
単純に凄い奴だと思っている
いつも通りハイボールをもらう
ペース的には10分で一杯ただ酔うために飲んでいる
…カラオケが入る
今時の高音で歌うアーティストの曲だ
上手いし高音も綺麗に出せている
「すご〜い!
この歌難しいよね〜」
スタッフの気になる子が歌った客に言っていた
僕は低音しか出ないし
歌もそんなに上手くないから勝手に敗北感を感じていた
歌っていた客は僕が飲みに行く度に歌っていた
僕はスタッフの子を眺めていれば良かったのだが
「たまには歌ってくださいよ」
と
客に言われ断っても歌わされた
多分
自分との差を見せつけたかったのだろう
僕は歌わされる度に気持ちが冷めていった
数週間後
僕は別の店の常連になっていた
ママ一人でやってる店
圧をかける人もいない
気持ちよく飲んで帰るようになっていた
この店に馴染んできた頃
…ガチャ
「あー!
久しぶりじゃないですか〜!」
あのスタッフの子だった
まぁ僕はただ飲むだけだったが…
やたらにこの子に絡まれる
「何でお店に来てくれないんですか〜?」
嘘はついてもしょうがない
カラオケの件
僕の飲む理由を素直に話した
彼女への気持ちは伏せたまま
それから口数が減って出勤の時間だと帰っていった
店のママに聞いたが初めて来たらしい
新規の客を探しに来たのだろう
後日また彼女は来た
僕に店での愚痴や悩みなんかを話すようになってきた
何でここに来るんだろう?
悩みなんて聞きそうな客はついてるだろうに
何度も同じことを繰り返し
疑問だけが膨れて僕の心を抉る
この店に来るのも潮時かなぁ?
そう思ってグラスを空けると
店のママに言われた
「あの子
あんたの事が好きなんじゃないの?
あんた店に来て愚痴るわけでもなく
飲みたいって言ったら飲ませてくれて
程よい話と記念日ごとのシャンパン入れるし上客だよ
綺麗な飲み方で若い子なら惚れるわね
ふつー
だから
ちゃんと話して結果が出ないなら
店を変えなさい」
全てバレてた…
後日その子は来た
いつも通り愚痴を吐いていた
そして
好きだと言いかけてきた
「待って」
僕は気持ちを伝えた
別に結果じゃないから貪欲に僕から全てを伝えた
彼女は嫌われたと思ってたらしく
ずっと泣いていた
お互いの気持ちは同じ所にあって
同じベクトルが同じだけ向いてる事を確かめた
「仕事でしょ?
送るよ」
僕らは手を繋いだ
お互いを見失わないようにできるだけ強く
「がんばってくるからお迎え頼んでもいいですか?」
振り返ってそう言う彼女は強く見えて
とても綺麗だった
これは飲み歩く僕と
そんな彼女の紡ぐ物語だ
これからずっと続いてく物語