たかだ

Open App
9/12/2022, 12:05:16 PM

修学旅行でのタクシー行動。
その時、グループの子たちが話してた。
『最近○○が私の事束縛してくる』
『○○が私が他の男子と話すと見てくる』
『○○に告白しようかな』
とか何とか。
男の子って嫉妬深いもんなのかな。
思い出せば何となく頷ける話だった。
でも、その時のわたしは乗り物酔いで思考が回らず。
『青春だなあ』と思いながら聞き耳をたてていた。

可愛い恋バナはドロドロな話に変貌を遂げた。
『○○彼女いるらしいよ』
『何か○○って重すぎて嫌』
『○○って誰でもよさそう』
何があった?2,3分の間に何があった?
愚痴大会が始まった。
わたしは目を閉じて、窓ガラスにもたれ掛かった。
中学生は恋多き年頃だろうけど、怖いなあ。
重いとしてもそれだけ好きって事じゃないの?
他の子と話してるときに見てくるのは、つまりそういう事じゃないの?
【恋】してるって事じゃないの?

…みんなのしている【恋】は所謂【遊び】的なものなのか?
失敬だとは思うけど、多分そんな感じなんじゃないかな。

よし。決めた。
わたしは【本気の恋】をする。
重いと思われても良いからとにかく自分で掴み取る。
誰でもいいとかよくないとかじゃなくて、やってみる。
もうすぐ卒業なんだから、今のうちに自分磨きをしなきゃ。
頑張るぞ!!


…とはいかないわたしなのでした。

9/11/2022, 11:23:39 AM

「今日って何日だっけ」
そう思うと俺はいつもスマホを見る。
一目で今日が何日だか、何曜だか分かる。
便利な世の中になったな、と感心してしまう。

そんなとき、母さんから荷物が届いた。
多分食品とか衣類とか、その辺りだろうと思った。
俺は注意深く段ボールの中身を開封する。
小さなメモが添えられていた。
『あんたの大好きなものを送りました。』
俺の好きなもの?心当たりが無かった。
母さんとは2,3年くらい会って無い。
好きなものなんてコロコロ変わるのに、
現時点での俺の好きなものが分かるなんて、母さんは凄いな。
俺は半ば疑っていたが、中身のラッピングを解いた。

カレンダーだった。
誰の家にもあるであろう、あのタイプだ。
別に俺はカレンダーに特別な感情は抱いていない。
母さんの気持ちを考えると、申し訳なくなった。
俺は壁のフックにカレンダーを引っ掛けてみた。
実家のような安心感がある。
パラパラ中をめくってみる。
よくあるタイプだ。
段ボールを部屋の端に寄せた。
俺は歯を磨き、布団を敷いて眠った。


俺はいつの間にか、日付けを確認するときは
母さんの送ってくれたあのカレンダーを見るようになっていた。
俺は7月のページをミシン目に沿って破った。
8月になったと実感した。
すると、カレンダーに書き込みがあることに気付いた。
不器用な字で、『父さんの誕生日』と書いてあった。
父さん本人が書いたんだとすぐに分かった。
「はは~ん?」
俺は腕を組みながらそう呟いていた。
部屋には俺しかいないけど、何だか父さんと母さんがいるようで
嬉しかった。
母さんの誕生日は12月だったから、
きっと12月のページには『母さんの誕生日』と書いてあるんだろう。

俺は思い出した。
小さい頃、俺はカレンダーをめくる係をしていた。
自分でも忘れていたのに、母さんは覚えていてくれた。
多分、あの時のような情熱を取り戻して欲しいという
母さんなりのメッセージなのかもしれない。
考えすぎだが、そう受け取っておきたい。

9/10/2022, 11:06:54 AM

「また明日」
去り際にあの人は言った。
優しげな、温かな、包み込むような笑顔で、
私に言った。
あの人の乗る電車が駅を発つ。
私は手を振り続ける。
電車が見えなくなるまで、
あの人が見えなくなるまで。

駅のホームに残った私は喪失感を胸に家路を急いだ。
もう少しだけ、さっきまであの人と居たこの場所に残りたい。
もう少しだけ、あの思い出に浸っていたい。
けど、余計に哀しくて虚しくなるのは嫌だった。
だから、私は帰らざるを得ない。

足が止まっていた。
ここに居てはいけないのに。
帰らなくてはいけないのに。
また明日会えるのに、
あの人の事を考えるのを止められない。
目頭は酷く熱くなるばかりで、
もうどうすることも出来ないほどに苦しい。
たとえ我が家に帰ったとしても、きっとこの感覚は終わらないだろう。