夢と現実の差が苦しい
「さよなら」って言わないでよ
もう会えないみたいじゃん
「温かいのと冷たいの、どっちがいい?」
「温かいの。」
即答する。
冬のはじまりを実感する。
「なあ、アニキ。」
オーヴィルはウィルバーの目を見た。
「やっぱアニキの宝物って、ヒコーキなの?」
ウィルバーは唇だけで笑う。
「そういう訳じゃないさ。挙げるとしたら、家族だとか、
この場所だとか、色々あるよ。」
「へえ。」
オーヴィルはスパナを握り直し、造りかけの飛行機のネジを締めた。
「…俺、思ったんだよ。」
「何をだい?」
「絶対このヒコーキを飛ばさないと、って。」
ウィルバーは少し馬鹿にしたように笑う。
「『鉄の塊が飛ぶわけない』じゃないか。」
「思ってもないくせに。」
「そうだね。周りの意見ばかり気にしていたら、何も出来ない。」
オーヴィルは最後のネジを締め終える。
「もう寝ないとだろう。明日も早い。」
ウィルバーはオーヴィルの肩を軽く叩く。
薄暗いガレージ内に、月の光が射し込んでいる。
未完成の飛行機の機体を、目映いほどに照らす。
「…ホットミルク作ってくれよ。アニキ。」
オーヴィルは機体の方を見たまま言う。
「お安い御用だ。」
※これは『ライト兄弟』モチーフの話です。(一応)
ライト兄弟は、元々大好きな歴史上の人物です。
性格的なものは3DSのゲームである太鼓の達人、【どんとかつの時空大冒険】
に登場する二人を参考にしながら書きました。
テーマから微妙にずれていますが、個人的には大満足です。
「長谷川くんのところには大きい白いのがいるんだね。」
横山静【ヨコヤマ シズカ】は自身の腕の中の小さな黒い物体を優しく
撫でながら言った。
長谷川大輔【ハセガワ ダイスケ】は照れ臭そうに頭を掻く。
「言うてもこの人は俺と同じくらいですよ。」
「…最初は俺、驚きました。地下倉庫に何か出るとは聞いてたんですけど。」
「私もだよ。でも、こんなに可愛いんだもの。連れて来ない訳にはいかないなって。」
黒いふわふわした物体はあくびをする。
白いマネキンのような物体はそれを両目の位置に空いた空洞で見つめた。
大輔は白い物体の無機質な手を握る。
「性別とか分からないけど…俺はきっとこの人に夢中なんです。」
物体はいとおしげに大輔の髪を撫でる。
「いいね~。友だち以上恋人未満、って感じだね~。」
静はにやにやしながらその様子を見ている。
「でも、私たちだって負けてないよ。ね、ふわふわちゃん。」
黒いふわふわはまるで母猫に甘える子猫のように、静の腕に頬擦りしている。
「私、これで寂しくないよ。」
「俺もです。」
──『この子が
居てくれるから。』
『この人が