「なあ、アニキ。」
オーヴィルはウィルバーの目を見た。
「やっぱアニキの宝物って、ヒコーキなの?」
ウィルバーは唇だけで笑う。
「そういう訳じゃないさ。挙げるとしたら、家族だとか、
この場所だとか、色々あるよ。」
「へえ。」
オーヴィルはスパナを握り直し、造りかけの飛行機のネジを締めた。
「…俺、思ったんだよ。」
「何をだい?」
「絶対このヒコーキを飛ばさないと、って。」
ウィルバーは少し馬鹿にしたように笑う。
「『鉄の塊が飛ぶわけない』じゃないか。」
「思ってもないくせに。」
「そうだね。周りの意見ばかり気にしていたら、何も出来ない。」
オーヴィルは最後のネジを締め終える。
「もう寝ないとだろう。明日も早い。」
ウィルバーはオーヴィルの肩を軽く叩く。
薄暗いガレージ内に、月の光が射し込んでいる。
未完成の飛行機の機体を、目映いほどに照らす。
「…ホットミルク作ってくれよ。アニキ。」
オーヴィルは機体の方を見たまま言う。
「お安い御用だ。」
※これは『ライト兄弟』モチーフの話です。(一応)
ライト兄弟は、元々大好きな歴史上の人物です。
性格的なものは3DSのゲームである太鼓の達人、【どんとかつの時空大冒険】
に登場する二人を参考にしながら書きました。
テーマから微妙にずれていますが、個人的には大満足です。
11/20/2022, 12:22:51 PM