「また明日」
去り際にあの人は言った。
優しげな、温かな、包み込むような笑顔で、
私に言った。
あの人の乗る電車が駅を発つ。
私は手を振り続ける。
電車が見えなくなるまで、
あの人が見えなくなるまで。
駅のホームに残った私は喪失感を胸に家路を急いだ。
もう少しだけ、さっきまであの人と居たこの場所に残りたい。
もう少しだけ、あの思い出に浸っていたい。
けど、余計に哀しくて虚しくなるのは嫌だった。
だから、私は帰らざるを得ない。
足が止まっていた。
ここに居てはいけないのに。
帰らなくてはいけないのに。
また明日会えるのに、
あの人の事を考えるのを止められない。
目頭は酷く熱くなるばかりで、
もうどうすることも出来ないほどに苦しい。
たとえ我が家に帰ったとしても、きっとこの感覚は終わらないだろう。
9/10/2022, 11:06:54 AM