たかだ

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「今日って何日だっけ」
そう思うと俺はいつもスマホを見る。
一目で今日が何日だか、何曜だか分かる。
便利な世の中になったな、と感心してしまう。

そんなとき、母さんから荷物が届いた。
多分食品とか衣類とか、その辺りだろうと思った。
俺は注意深く段ボールの中身を開封する。
小さなメモが添えられていた。
『あんたの大好きなものを送りました。』
俺の好きなもの?心当たりが無かった。
母さんとは2,3年くらい会って無い。
好きなものなんてコロコロ変わるのに、
現時点での俺の好きなものが分かるなんて、母さんは凄いな。
俺は半ば疑っていたが、中身のラッピングを解いた。

カレンダーだった。
誰の家にもあるであろう、あのタイプだ。
別に俺はカレンダーに特別な感情は抱いていない。
母さんの気持ちを考えると、申し訳なくなった。
俺は壁のフックにカレンダーを引っ掛けてみた。
実家のような安心感がある。
パラパラ中をめくってみる。
よくあるタイプだ。
段ボールを部屋の端に寄せた。
俺は歯を磨き、布団を敷いて眠った。


俺はいつの間にか、日付けを確認するときは
母さんの送ってくれたあのカレンダーを見るようになっていた。
俺は7月のページをミシン目に沿って破った。
8月になったと実感した。
すると、カレンダーに書き込みがあることに気付いた。
不器用な字で、『父さんの誕生日』と書いてあった。
父さん本人が書いたんだとすぐに分かった。
「はは~ん?」
俺は腕を組みながらそう呟いていた。
部屋には俺しかいないけど、何だか父さんと母さんがいるようで
嬉しかった。
母さんの誕生日は12月だったから、
きっと12月のページには『母さんの誕生日』と書いてあるんだろう。

俺は思い出した。
小さい頃、俺はカレンダーをめくる係をしていた。
自分でも忘れていたのに、母さんは覚えていてくれた。
多分、あの時のような情熱を取り戻して欲しいという
母さんなりのメッセージなのかもしれない。
考えすぎだが、そう受け取っておきたい。

9/11/2022, 11:23:39 AM