時の雨

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8/11/2024, 9:25:06 AM

今日も列車に揺られている。どこか揺籠のようで、残業疲れの俺にとって睡眠導入剤になるには十分すぎた。働いて、働いて、安定した老後を過ごすために。...ああ、寝てしまいそうだ。


明日もどうせ残業、明後日も残業。変わらぬ日々を繰り返すのみ。毎度鏡を見て、クマがこびりついた顔と睨めっこだ。
駅へ向かうために一歩を踏み出す。
はずだったが、なぜか足は正反対の方向へ。
ソファに飛び込み、だらしなくシャツのボタンを開ける。上司には仮病の連絡。耳が痛いが無視をする。そうして静かに目を閉じて...


目を覚ます。視界に入るには吊り革やホームドア。どうやら寝てしまっていたようだ。
丁度最寄駅だったため、急いで飛び降りる。なんだか幸せな夢を見た気がする。

まだ俺の人生は始まったばかりなのに、何故生き急ぐように動いていたのか。
明日は休もう。そしてたくさん寝て、出前でも取って、映画でも見よう。

俺の終点はまだまだ先なんだ。


2024/08/10 #終点

8/9/2024, 9:14:10 AM

目を閉じれば思い出す。
あなたが初めて「生きている」と叫んだ声を。
あなたが初めて自分の足で歩いたのを。
あなたが初めて友達を家に呼んだのを。
あなたが初めて喧嘩をしたのを。
あなたが初めてテストで100点を取ったのを。
あなたが初めて挫折したのを。
あなたが初めて好きな人を連れてきたのを。

あなたが初めて新たな命を抱えたのを。

「お母さん!」

どうしてないているの?私は昔から、あなたの笑った顔が好きよ。
私の大事な大事な宝物。蝶よりも花よりも愛しい私の子。


命が散る。


2024/08/09 #蝶よ花よ

8/8/2024, 8:16:56 AM

自分はこの話の主人公だ。
しかし、自分の人生は自分のものではない。創作者が作り上げたます目を歩くだけの駒である。

外側も、内側も、自分の最後も、何もかも最初から決まってた。


2024/08/08 #最初から決まってた。

8/7/2024, 8:55:56 AM

私の唯一の明かり。私だけの陽だまり。
貴方の帰りが遅くても、貴方が不満を溢しても、私には貴方だけなんだ。

だから帰ってきて。貴方が居ない部屋はこんなにも冷たくて、寒い。サイレンが怖い。
早く、早く、早く、早く早く早く
車から降りて私の元へ戻ってきて。
貴方は私の太陽。私は貴方の月。


2024/08/12 #太陽

8/5/2024, 8:46:12 AM

君とチェスをするのが好きだったんだ。
嫌なくらい小さくて、白い病室で二人きりで。時の流れさえも忘れて遊ぶのが好きだった。どんなに苦しくても、寂しくても、君がいればそんな気持ちは消し飛ぶ。


あの時、白い病室で目立つ、君の口から溢れた紅い極彩色が目に焼き付いている。

自分はなんてちっぽけなのだろう。
自分が可哀想なくらいに能無しで、何も意味を見出さないから、ほら、自分のせいで毎日が退屈だ。
チェスってこんなにつまらないものだっけ。

どんなにつまらないことでも、時の流れさえ忘れて、一人で遊び続けている。


2024/08/05 #つまらないことでも

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