まただ、
私とあなたの視線は確実に重なったのに。
見つめあって、火花が散ったのに。
まだあなたの瞳の奥の光に
手が届かない。
子供のころ、ホントにして欲しかったことって
なんだったっけ。
あー、思い切り甘えたかったのかも
あとはー、可愛いって言ってほしかったな。
それから、大切だよ大丈夫って抱きしめて欲しかった。
そういうの全部、
叶えられないまま時間ばかりが過ぎて
大人になってしまったから、
本当に大切で好きなものさえも
なんだか分からなくなってしまった。
好きかもなこの人のこと、
あーでもやっぱ私のこと好きじゃなさそう
傷つけられそう
やめようかなあ、
あ、もうこの人のこと好きじゃないから別れよー
でもやっぱり私のこと大切なのかも
一緒にいた方がいいのかなあ
そうやってずっと、どっちつかずで
大好きだよ!って胸を張って言うことも、
きちんと終わりにして嫌いになる勇気も
どちらも持ち合わせてなんていない。
いつからだっけ、こんな私みたいなひとに
愛着障害って名称が与えられたのは。
名前がついてしまったから、
この生きづらさも、
それのせいにしてしまえるじゃないか。
いつか変われますように。
誰かの力なんかじゃなくて
自分の力で。
きちんと歩けようになりますように。
あの時私のことを助けてくれた人は
誰だったっけ
あなたが私を作ったんだっけ
ああ、あの時からあなたが私の神様だったんだ
暗闇の中でひとつの輝きを放つ居場所に、
なってくれたんだっけ
美味しいってご飯を食べてくれたっけ
私のために車を出してくれたっけ
結局間に合わなくて2人で寄り道したよね
あ、そうだ、あなたがお腹を壊して……
ひとつも忘れたくない。
あなたの私を呼ぶ声も
私がご飯を食べるのを愛おしそうに見つめていたあの瞳も
頭痛いよ〜って泣いてる私を心配そうに撫でてくれた手も
あなたの香りも
あなたの落ち着いた声も。
なにひとつとして巻き戻し再生はできないけれど
大切な、大切な私の宝物。
けれど、私のことは早く忘れてね
私の声も、私の顔も、私の匂いも、私の愛し方も
なにもかもきちんと消してね。
そうして前に進んでね。
一瞬でもあなたの頭の中にいられて幸せだったから。
それだけで充分だったから。
同じ景色を2人で並んで見ることはありません。
私の作ったご飯を美味しいって食べてくれる、
そんなあなたはいません。
寒いねって暖め合うことも、
春がきたね、あと何回一緒に桜を見れるかなって笑うことも
あなたの幸せを願うこともありません。
あなたが毎日笑顔でいられますように
そう遠くから願うこともありません。
何を言われても、もう無駄なんです。
失ってから気づくとか、そんな子供じみたこと
言わないでくださいよ。
悲しくなってしまうから。
あなたがくれた3年間は
今の私を作る、かけがえのないものでした。
あなたが好きだと言ってくれたから
好きになれた「私」は、
あなたじゃない人が大切にしてくれる「私」に
変わってしまいました。
あなたが大切にしてくれた日があったから、
あなたが大切にしてくれなくなった時に、
抱きしめてくれる人が現れたんだと思います。
泣きません。あなたのためには。
悲しみません。あなたのためには。
でも忘れません。
この先何年生きていても、
「私」を作る、神様の1人になってくれたこと。
晴れだと暑いし。
雨だと鬱陶しいし。
ずっとそのくらいの気温で愛してよ。ずっと。