鍵をかけたこの日記は敢えてここに置いていく。
好奇心旺盛なきみは見つけたらきっと我慢できずに鍵を探してしまう。それとも開けてほしいのだと気づくかな。
中身を見たきみはどんな反応をしてくれるだろう?
ふふ、想像するだけでたまらなくわくわくしちゃうね。
お題:閉ざされた日記
思わず、声が漏れた。
隣をそっと盗み見ると、一見不機嫌そうに唇をとがらせた愛しい人の横顔。
「なんだよ」
「う、ううん。なんでもないよ」
車の通りは激しくない、というかほぼ歩道みたいな道だから肩を抱いてきた理由とは考えにくい。そもそもとても珍しい行動ゆえにびっくりしてしまった。
「どうせ、似合わねーことしてるとか考えてんだろ」
バレてた。
だって、今風に言うとものすごく「ツンデレ」だから。とても可愛い性格だと思っているけれど、なかなか素直になれないことを密かに悩んでいるのも知っている。
「……今日はすげー寒くなるって言ってたろ。んな薄着してくんなっての」
もしかして、風が吹くたび身をすくめてたの、気づかれてた?
確かに天気予報では「木枯らし一号」という注意喚起をしてくれていた。ただ気温の数字に振り回された自分が悪い。
——ああ、そうか。ようやく、行動の意図に気づけた。
「……あたためてくれてありがとう」
回されたままの腕に頬を寄せると、さらに距離が縮まったように感じた。
お題:木枯らし
いろんな人から「美しい」と褒め称えられて、あなたはどんどんその言葉にふさわしい姿形へと変わっていく。
でも、忘れないで?
隣の引き立て役がいるからこそ、磨きがかけられているんだって。
隣を、忘れないで?
お題:美しい
水平線から昇る光を見たとき、私は力強くてきれいだと告げた。
隣のあなたはただ眩しすぎると告げた。
濃い藍色の空に浮かぶ淡い光を見たとき、私はきれいだけどどこかさみしいと告げた。
隣のあなたはどこか自分に似ていると悲しそうに笑った。
初めて一緒のベッドで眠ったとき、私は幸せで胸がいっぱいだとつい泣いた。
隣のあなたはまだ人のぬくもりに慣れていないとぎこちなさの含んだ苦笑をこぼした。
わたしとあなたが見ているこの世界は、まだまだ大きな隔たりがあるんだね。
負の感情を生むばかりじゃない、すてきなものがいっぱいあるよと頑張って伝えて、あなたの笑顔がもっと増えますように。
お題:この世界は
『っどうして、どうしてどうして!!』
ある人からはナイフで切りつけられるように何度もあびせかけられ、
『どうして?』
ある人からは正反対の柔らかい声に誘われて答えても何度も否定され、
『どう、して……?』
ある人からは偶然その場に居合わせたばかりにまるで犯人のような扱いをされ、
その四文字はいつしか、心を食い尽くそうと常に待ち構えるけものとなった。
成長すれば心身とも強くなれると思い込んでいた。
聞く機会も減ると勝手に期待していた。
「どうしてこうなったかわかる?」
「ふふ、どうしてだと思う?」
やめて。
その四文字をむやみに振り回さないで。——縋りたくないのに縋りたくなってしまう。
どうして、こんな目にあわなきゃいけないの!
お題:どうして