Ayumu

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 思わず、声が漏れた。
 隣をそっと盗み見ると、一見不機嫌そうに唇をとがらせた愛しい人の横顔。
「なんだよ」
「う、ううん。なんでもないよ」
 車の通りは激しくない、というかほぼ歩道みたいな道だから肩を抱いてきた理由とは考えにくい。そもそもとても珍しい行動ゆえにびっくりしてしまった。
「どうせ、似合わねーことしてるとか考えてんだろ」
 バレてた。
 だって、今風に言うとものすごく「ツンデレ」だから。とても可愛い性格だと思っているけれど、なかなか素直になれないことを密かに悩んでいるのも知っている。
「……今日はすげー寒くなるって言ってたろ。んな薄着してくんなっての」
 もしかして、風が吹くたび身をすくめてたの、気づかれてた?
 確かに天気予報では「木枯らし一号」という注意喚起をしてくれていた。ただ気温の数字に振り回された自分が悪い。
 ——ああ、そうか。ようやく、行動の意図に気づけた。
「……あたためてくれてありがとう」
 回されたままの腕に頬を寄せると、さらに距離が縮まったように感じた。


お題:木枯らし

1/17/2023, 4:08:15 PM