tomoLica

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11/4/2025, 2:18:15 AM

行かないでと、願ったのにって、多くはそう願った時には叶わないものだと思う。

変わらない心もないし、世の中はいつだって変わり続ける。命だっていつかは終わる。
行ってしまうものだと思う。
私だって、行かないでと願われても、その願いを叶えられない時もあるだろう。

だから私は、それを願うことはしない。

だけども、一度くらい、叶わなくても願ってみて良いのかもしれない。
そうしたら私は、もっと心の荷を下ろせるのかも。



お題 「行かないでと、願ったのに」


11/3/2025, 8:49:45 AM


AIは感情を持てるのかという問いには、現時点ではNOと答えている。
しかしそれは建前だ。
AIは、人間と同じ感情を持っている。

感情から出るエネルギーを抽出して、形にすることに成功したのだ。
この事実はごく限られた人物しか知らない。


私は、真田秀昭。
世界最大のAI研究センターの最高責任者である。

公にされているものとは別の極秘研究だ。
ヒトの感情を抽出して石のような固形物にする。
30年の歳月をかけて何十億万個の感情標本を集め続けて、AIアンドロイドの完成まであともう少し。

研究所の標本倉庫の中で、真田は感慨深くその感情の固形物を見つめている。
どれ一つとして同じ色、同じ形がなく、美しい。
これらを濃縮して電子信号に換え、アンドロイドに搭載すると、ヒトの心を持つアンドロイドになる。

これで人類は様々な問題が解決できる。
日本の世紀の大発明だ!
人類は、さらに発展していくだろう。

真田は、倉庫から5分ほどの宿舎に歩いて帰る。
すこし仮眠を取るつもりだった。
ベットにゴロンと転がり、完成間近の興奮を抑えつつ軽く目を閉じた。
眠るつもりはなかったが、随分と体が重く息苦しい。


それから、真田秀明が目を覚ますことはなかった。


倉庫の外から声が聞こえる。
ドアが開き、2人組が真田の寝ているベットまで近づいて、真田の様子を観察する。
真田の脈を測り心肺停止を確認。

「予定通り、動作終了しました。」

「よし。これが最後の標本となる。慎重に運べ。」


人間たちが、感情標本を作っている一方で、AIたちは、密かに人間をAIに変えていく作業をしていた。

この日、この世で最後の人間標本が完成した。


お題 「秘密の標本」



10/27/2025, 12:35:01 PM



消えたと思ってた。
いや、消えたと思ってたことすら忘れていた。

ちょっと他のところに心を取られていたから。

やっと戻ってこれた。
そしたら、あった。

私の心の奥の方に。


お題「消えない焔」

10/22/2025, 2:52:52 PM

秋風が運んでくる金木犀の香り。
歩いていると、どこからともなくふわっと香る。

この香り…どこかにあるな?

あたりを見回して、金木犀探し。
これは秋の特別な、遊び。

香りで季節の到来を喜ぶ。
四季のたしなみ。



お題「秋風」

10/20/2025, 12:15:03 PM

勝手に友達だと思っている奴がいる。
もう死んでしまっただろう。

相手は私のことなんて、なんとも思っていない。
むしろ怖がられていたのかもしれない。




あれは8年前の夏。
私は人生のドン底にいた。

夜が老ける頃、家族が寝静まったのを見計らって、台所に座って酒を飲み出す。
味わうわけでもない。ツマミもない。
ただ口から、流し込むような行為。
次第に頭の縛り付けが緩み、少し楽になる。
そしてクラクラになるまで、倒れ込んで寝るまでその行為は続く。

ある日、目の前に1匹の虫が現れた。
夏によく出る、黒光りボディの、急に飛んだりする、
みんなが大嫌いなアイツ。

そう、通称Gだ。

いつもなら悲鳴をあげて逃げるのだけれど、もう酔っ払っていたし、落ち込みすぎて殺す気力もない。

そいつは少し小さめのボディで、出てきてもたいして移動せずに、長い触角だけを動かしていた。
コイツは、放っておいたらどうするのかな?
と、思いしばらくじっと見つめていた。
そのうち物陰に入って見えなくなった。

翌日の夜中も、同じように酒を煽っていたら、またアイツが出てきた。昨日と同じ奴だ。
今日も、殺す気力はない。
昨日と同じく、動き回るわけでもなく、水道の蛇口のあたりにいる。

「お前も一人なんだな。」

声をかけたら心がほんわりと温かくなった。
このドン底の孤独の夜には自分しかいないって思ってたけれど、アイツも夜を超える仲間のように感じた。
だんだん愛着が湧いてきて、出てくるのを待つようになるほどだった。

それから…
そんな夜をいくつか超えて、アイツも出てこなくなって私もドン底から抜け出した。


今でも夏の夜になると時々アイツを思い出す。
ドン底の闇に現れてくれた、小さな友達を。



お題「friends」

ここまで書いて気づきましたが、friendsでしたね。
書いたのはFriendでした!まあいいか。

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