どうして
「どうして」
大人のそれにも瞬時に答えをだしてくる世の中
孫におばあちゃんの知恵袋で返そうものならその真偽をAI 端末でチェック そんなのないよ
経験値が一瞬揺らぐが毅然と告げる
ばあばの故郷ではおばあちゃんもそのまた昔からそう言われて続けてきたんだよ
長く語り継がれてきたことは沢山の意味がある宝物だから覚えていて
コンピュータの精度が上がるにつれそれに頼り過ぎ情報の渦に巻かれ人の気配がうすれる
便利さには作り手の思惑フィルターがかけられているものだと自分に言い聞かせ自身を保つ
今や独り歩きしそうな人工知能なんて怖い呼び方になってるし
人間達が片隅に追いやられそうであー怖い怖い
本来 知識と経験値は両輪をなし互に支え
時には検証するものだったはず
少し前までは頭デッカチなんて揶揄する言葉があったのにね
法隆寺の西岡棟梁の木の見立ての逸話は感動で
伝統の力、手技、経験値、現存している人間が持つ力それらを目の当たりに見せてくれていた
孫には人が生き物として豊かで幸福だと思えるような世の中のバランスを探っていって欲しい
だから五感を通したばあばの知恵袋も捨てたもんじゃないんだよ
ずっとこのまま
ずっとこのまま時間が止まったらいいのにって思うことがあるんじゃない
そんな時この琥珀色の砂時計を使ってみて
時の流れを逆行させる力がある
時が進む分だけ巻き戻る
つまり時の上りと下りが押し合う
ずっとこのまま止まるからね
何も変わらないことを望んでいるって思うかな
いいえリワインドタイムの醍醐味はそこじゃないよ
止まってみえている間に自分を成長させられるところ
砂時計の力を借りて時の速さに抗ってみる事
何もしないんじゃないからね
結果なんてわからないよ
自分が巻き戻りたい時に再び身を置いて
全力投球し続けるの
長く生きていると流れに身を任せるのに慣れきって
今では現状温存できれば御の字かなって気分
でも懐かしい曲を耳にすると流れに棹さしていた頃の若い自分に会いたくなったりするのよ
後先考えずにこのままずっと疾走していたいって…
寒さが身に染みて
おじいちゃんおばあちゃんへ
寒さは頭で感じなきゃね
身体で感じるのは若い時までなんだって
皮膚感覚が鈍ってくるってよ
寒さを感じにくくなってきたって?ーうんうん
高齢者だもんー確かにね
回復力は落ちる一方ー認めたくないでもそう
今は冬だと言い聞かせてね
頭で寒さ用心これが冬を乗り切る肝なんだって
元気で春を迎えようね
20歳
強風吹き荒れる中
晴れ着姿で闊歩する若者をあちこちで見かけた
あーあ今日は成人式なのか…
私は田舎の成人式には出なかった
帰省せず
式当日は友人の成人式のお祝いへ行った
振袖姿に真っ白なファーの襟巻き
定番姿であふれかえる会場
華やいだ友人を愛でながら
彼女の手放しの笑顔が可愛いらしくて
私は普段着でめでたさを享受した
それはそれとして
自分自身は着飾り式には全く興味がなかった
父親は娘の晴れ姿を見たかったようだったが
冷めた気分で祝い金だけは貰った記憶がある
額も何に使ったかも全く覚えていない
一人暮らしを始めて久しいのに親の視線に囚われたまま殻も破れずにいる自分自身への焦り
成人がなんだと世間の声にウンザリしていた
今日まで気づかずに来たがあれはあれで
人生初めての親や世間への反抗で…
20歳にしては何とも恥ずかしい成長の証を残していた訳で
冥土の土産に
めでたい記憶の一つにしておきますわ
三日月
三日月が吹き飛ばされそうな夜
背後に満月の影
頼りなげない人影は
長く伸びることで大地にしっかりと立つ